下痢

下痢 メカニズムと原因、対処法

腸の中には、飲食物2L、唾液1L、胃液2L、胆汁1L、膵液2L、腸液1Lの計9Lが注ぎ込まれます。9Lのうち8Lが小腸で吸収され、1Lが大腸に流れ込みます。大腸で、さらに9割吸収され便の中には100mL、これが程よい固さの便の水分量です。便の水分量が多くとなると下痢となり、少なくなると便秘となります。ちなみに、便の色は胆汁の色です。

 

腸管内に水分が引き込まれる浸透圧性下痢
水を引き込む力=浸透圧が高い食べ物が腸管内にあると、吸収されるべき水分が吸収されずに水分過剰となり、下痢になります。牛乳で下痢を起こしやすい場合、牛乳中に含まれる乳糖を分解する酵素ラクターゼの分泌が不足し、高浸透圧となり下痢を生じます(乳糖不耐症、にゅうとうふたいしょう)。ソルビトールやラクツロースなどの人工甘味料、便秘の際に用いるマグネシウム製剤、アルコール摂取、食べ過ぎ、飲み過ぎによる下痢のほとんどは、消化不良による浸透圧性下痢です。対処の基本は、摂取をやめることです。

 

炎症により浸出液が増える滲出性下痢
炎症により腸から血液成分や細胞内の液体が滲み出てきて、便の水分量が増加します。同時に、炎症により腸の上皮細胞が障害されて、水分の吸収が上手く行われなくなり、下痢を生じます。ロタウイルス、ノロウイルスなどのウイルス性腸炎、黄色ブドウ球菌、カンピロバクターなどの細菌性腸炎、寄生虫・原虫、虚血性腸炎といった病気は急性の下痢として発症します。潰瘍性大腸炎、クローン病などは慢性の下痢となります。

 

腸粘膜からの分泌液が増える分泌性下痢
細菌の毒素や消化管ホルモンの影響、胆のう摘出後に腸管からの分泌が多くなり下痢になることがあります。胆汁を蓄えている胆のうが無くなることにより、胆汁が多く流れやすくなり、胆汁に含まれる胆汁酸が大腸粘膜からの水分泌を増加させ、便中の水分が多くなるからです。ただし、胆のう摘出後の下痢は一過性のことが多いです。

 

食べた物の通過が早くて水分を吸収できないぜん動運動性下痢
腸は自律神経で支配されています。自律神経は感情や心の動きの影響を受けるため、腸にもその影響が及びます。腸は第二の脳と呼ばれており、脳が不安やストレスを受けると、その信号が腸につながり腸の運動に影響を与えることがわかっています。また、ハッピーホルモンと呼ばれ、やる気や幸福感につながる脳内の神経伝達物質「セロトニン」は脳には、たったの1割しかなく、9割が腸にあることが明らかになりました。ストレスや緊張、不安は自律神経に影響が及ぶため、ぜん動が早くなったり遅くなったりします。ぜん動運動が早すぎると、食べ物が早く腸を通り過ぎるため、水分の吸収が不十分となって下痢をします。有名な病気に過敏性腸症候群があります。便通異常があるのに、検査をしても何も異常は見つからない。過敏性腸症候群は、下痢型、便秘型、下痢と便秘を繰り返す混合型に分類され、下痢型は男性に多く、便秘型は女性に多い傾向があります。

 

その他にも、抗生物質や抗がん剤など薬の副作用で下痢になることもありますし、糖尿病で自律神経が乱れ、下痢や便秘になることもありますし、大腸がんは便秘にもなりますが、下痢にもなります。

 

【下痢の対処法】
急性下痢の多くはウイルス性腸炎で、適切な水分、ナトリウムなどの電解質の補給で自然に治癒します。いわゆる下痢止め(止瀉薬)は、毒素や原因菌の排泄を遅らせるため、原則禁忌です。ビオフェルミンなどの整腸剤が良いでしょう。下痢がひどい時は、脱水、電解質異常などにより、けいれんや意識障害などに至る可能性があるため、医療機関で乳酸化リンゲル液のような点滴を受けたほうが良いです。過敏性腸症候群の場合は、生活習慣の改善や食事療法、薬物療法で改善します。下痢が長引くときは、大腸がんや潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の可能性もあるので医療機関受診が勧められます。

 

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