ジェムザール(一般名:ゲムシタビン、注射剤)

ジェムザール(一般名:ゲムシタビン、注射剤)

消化器がんの中では、膵癌胆道癌によく使われます。保険適応は、非小細胞肺癌、膵癌、胆道癌、尿路上皮癌、再発乳癌、がん化学療法後に増悪した卵巣癌、再発・難治性の悪性リンパ腫。

 

ジェムザールは、腫瘍細胞のDNA合成阻害を起こし、代謝拮抗薬のカテゴリーに属し、広範な固形癌の標準治療薬として位置付けられています。

 

開発経緯
ジェムザール(一般名:ゲムシタビン塩酸塩)は、1983年に米国イーライリリー社が合成した新しい抗悪性腫瘍剤です。本剤は、デオキシシチジンの糖鎖の2'位の水素をフッ素に置換したヌクレオシド誘導体であり、抗悪性腫瘍剤のスクリーニングにおいて優れた抗悪性腫瘍作用を示し、強く特異性の高い代謝拮抗作用を有することが判明したことから、抗悪性腫瘍剤としての開発が進められました。本剤は類似構造をもつヌクレオシド系代謝拮抗剤シタラビン(ara-C)と同様に細胞内に取り込まれた後、三リ ン酸化物に代謝されてDNA合成を阻害します。しかしこの際、ara-Cとは異なる作用機序と代謝特性(「マスク されたDNA鎖終結」と「自己増強」を有し、in vitroと各種in vivo腫瘍モデルの検討で、優れた抗腫瘍活性と広範な抗腫瘍作用スペクトルを有し、固形腫瘍に対しても抗腫瘍作用 を示すことが認められました。海外では1987年より米国及び欧州各国において第T相試験が開始され、1995年にイギリス、オランダ、オーストラリア等で承認を受けるに至り、現在世界100ヵ国以上で承認又は販売されています。膵癌に関しては、海外の臨床試験で腫瘍縮小効果の認められない症例においても「腫瘍関連症状の改善」が認められたことから、抗癌剤による腫瘍関連症状の軽減を評価できる項目として「症状緩和効果」 (Clinical Benefit Response;CBR)が開発されました。これは、「疼痛」、「一般状態(Performance Status;PS)」、「体重」の改善をもとに抗癌剤の有効性を評価するもので、症状緩和効果有効例では無効例に比べて生存期間が延長し、膵癌治療効果の主要評価項目として有用なことが示唆されています。海外での症状緩和効果を主要評価項目とした臨床試験において、膵癌に対する本剤の有効性が明らかになったことから、本邦でも1998年8月より国内第T相試験を実施しました。さらに米国、カナダ及び南アフリカで実施された第U相試験、第V相試験の成績と併せて膵癌に対する有効性が確認されたことから2001年4月に膵癌の治療薬として承認されるに至りました。(イーライリリーHPより抜粋)

 

ジェムザール製品情報 

 

膵癌術後補助化学療法2008ASCO

 

ジェムザール(一般名:ゲムシタビン、注射剤)

 

ジェムザールによって、膵癌、胆道癌の化学療法の考え方が、ガラッと変わってきました。それまでは、膵癌、胆道癌は、全くと言っていいほど、抗がん剤が効きませんでした。ジェムザール単独投与でも、時として、手術不能の膵癌の患者さんが、2年、3年と生存することも稀ではなくなってきたのです。膵癌で膵頭十二指腸切除や膵体尾部切除を行っても、かなりの方が1年以内、ほとんどの方が2年以内に再発します。

 

膵癌診療ガイドライン(2013年版)では、膵臓がんの術後補助化学療法は、実施することが勧められ(グレードA:行うよう強く勧められる)、薬剤としてはTS-1がグレードA、ジェムザールはグレードB(行うよう勧められる)となっています。ただし、世界的にはジェムザールが膵癌に対しては圧倒的に使用されていると思います。

 

胆道癌に対しては、切除不能胆道癌、術後補助化学療法のいずれも、ジェムザールの有効性はグレードC1(高いレベルの科学的根拠はないが、行うことを考慮してもいい。有用性が期待できる可能性がある。)にとどまっています。

 

副作用は、骨髄抑制が最も多く、その他、抗がん剤に普遍的にみられる合併症が幅広くあるものの、発現頻度は少ないです。

 

ジェムザールはTS-1と同様、膵癌・胆道癌といった難治の固形癌に対する抗がん剤として、ブレークスルーとなりました。

 

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