肝胆膵がん疫学
肝胆膵（肝臓・胆道・膵臓）がんは、難治のがんとして認知されていますが、ここでは肝胆膵がんの疫学について触れてみます。
年間死亡者数は2015年の国立がん研究センターのレポートによると、全がん死亡者364,872人（2015年）中、膵臓がんが32,800人で4位、肝臓がんが28,900人で5位、胆道（胆のう・胆管）がんが19,200人で6位でした。
5年生存率（男性）で見ますと、全ステージで肝臓がんは33.5%、胆道がんは23.9%、膵臓がんはがくんと下がり7.5%です。女性の肝胆膵がんの5年生存率もほぼ同様です。肝胆膵がんの5年生存率は全がんの中でも悪く、特に膵臓がんは最も悪いです。
部位別がん死亡者数推移のグラフを見てみますと、肝臓がん死亡者数は近年減少傾向、胆道がんは不変、膵臓がんは不変〜漸増しています。
肝臓がん死亡者数が減少しているのは、その背景となるウイルス性肝炎の治療が飛躍的に伸びた結果です。特にC型肝炎治療薬ハーボニー（商品名）の出現は肝炎撲滅に向けて、ひいては肝がん著減に向けての布石となります。
胆道（胆のう・胆管）がんの死亡者数はあまり変わっていません。胆嚢がんは早期発見、早期治療（胆嚢摘出術）されればほぼ完治します。一方進行胆嚢がんとなると、いかなる手術をしても著しく予後が悪化します。胆道がんは、早期で発見されることはほぼなく、ある程度進行して自覚症状（黄疸や皮膚掻痒感、褐色尿、灰白色便など）が出現しないと発見されにくいです。
治療は手術が第1選択となり、発生部位が遠位胆管（十二指腸に近いほう）であれば膵頭十二指腸切除が一般的に行われ、上部胆管や肝門部胆管となると肝切除を主とする手術が選択され、いずれも難易度の高い手術となります。
膵臓がんは自覚症状（黄疸、腹痛、背部痛、体重減少など）が出現すれば、その時点で5割以上は切除不能（unresectable)です。したがって、早期（超早期と言っても良いです）に発見され、速やかに手術、化学療法の集学的治療にもっていかなければ、助かりません。高齢化社会と他のがんの制御率の向上、がん予防の普及により全がん患者の罹患率、死亡者数の減少はあっても膵臓がんでの死亡者数は多少の減少はあっても、全がんに占める割合が減ることは当分はないものと考えます。
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