外科医が紹介患者さんを前にして考えていること

外科医が紹介患者さんを前にして考えていること

 

 

私は急性期病院で働いています。したがって、外来時には紹介患者さんに対峙することとなります。

 

その時、外科医はこういったことを考えています。

 

まずは、その患者さんの属性をサラッと確認します。年齢/性別/既往歴(今までどういった病気があるのか?どういった手術を受けたことがあるのか?)/身長/体重などですね。

 

それから付き添いの家族を含めて、どういった家庭環境にあるのか?家族の中で大事にされているのか、疎外されているのかといった具合ですね。

 

次に、話し始めて、ほぼ1〜2分で、患者さんのインテリジェンスがわかります。それを元に、話す内容のレベルを変えていきます。医療情報含めて理解力、知力がどれくらいあるのかですよね。

 

性格もほぼ同時にキャッチしていきます。猜疑心が強いのか、お任せモードなのか、あっさりしているのか、しつこいのか、、、などなどですね。

 

それからの話は、患者さんの知力と性格によって、適宜併せていくわけですよね。知力があれば、科学的根拠、エビデンス、5年生存率、、、など、受け入れ可能となるわけです。

 

例えば『現状は胃がんのステージIIで、胃体下部に病変の主座があり、胃がん治療ガイドラインでは、幽門側胃切除+D2リンパ節郭清がエビデンスのある外科治療で、当科では腹腔鏡手術もステージII胃がんにまで、適応拡大していますので、この手法をお勧めします。なお、病理結果でもステージIIであればTS-1による術後補助化学療法を1年間行うことで、統計学的に5年生存率が上がります』などの専門用語も理解していただけますよね。

 

インテリジェンスに疑問があれば、『胃にがんがあります。手術でとりましょう!私たちも一生懸命頑張りますから、一緒に頑張りましょう!』と、かみ砕きすぎて説明することもあります。

 

性格は、外来で対峙しているドクターへの紹介シナリオに左右されることも多いです。これは、どういうことかと言えば、紹介元のクリニックや病院から、『あそこの病院の先生は、手術がうまいから自信もってお勧めしますよ』とかすでに、言われていたり、

 

『ネットで検索して、先生はこの手術で有名だから紹介してもらいました』などの前触れが入っていると、患者さんが外来に訪れたときは、ほぼ信頼モード100%になっていますので、外科医側も対応が楽でスムーズになります。

 

ところが、猜疑心が強く、しかも外科医側が弱気な発言をすると、途端にいや〜なムードとなります。これは、外科医側にかなりの責任があります。

 

いわば『命預けます』といった状況の患者さんを前に、“この手術をすると、こういったしばしば致死的な合併症が生じる可能性があります”とかを長々と話したり、下を向きがちに、患者さんの顔をあまり見ないで、小さな声でもじもじいモードで話す外科医に患者さん側は『命預けます』モードには到底入らないように思います。

 

要は、患者さんが理解または納得されて、『一緒に頑張る』といったモードに入ることが大事だと思っています。

 

まず診察に前もって、紹介状と添付画像や検査所見(CTとか内視鏡検査所見とか血液検査所見です)には、一通り目を通しておきます。

 

ここから、身体所見診察に入り、必要に応じて精密検査の追加オーダーを出すわけです。

 

大学病院を含めて急性期病院への紹介時には、だいたい診断(質的診断と進展度診断)、例えば胃がんであれば、胃のどこに、どれくらいのがんがあり、CTなどで、リンパ節転移はあるのか、遠隔転移はあるのかなどの診断はほぼついて、紹介されます。
したがって、治療方針は紹介の外来診察時で、ほぼ立てられるわけです。

 

外科医は、初回診察5分後には、ほぼその患者さんのシナリオをほぼ掌握しています。

 
いつ入院して、
いつ手術、
手術は何時間くらいかかって、
合併症は、○○、△△の可能性があり、
その患者さんの属性から手術死亡率は、○○%くらい、
入院期間は、合併症ない場合、○○日くらい、
手術は、誰が執刀して、第1助手または指導的助手が誰だれで、第2助手が誰、
この患者さんはVIP(例えば同業者のドクターや、会社社長)だから、個室が必要、
手術は、こういう手順で、こういう再建法で、、、、、
手術後は、補助化学療法が必要、、
手術後は、○か月ごとのインターバルで、(がんの)再発チェックを行う

 

こういったことは、経験値の高い外科医であれば、同じように考えていることだと思います。ただし、こういったことを外来ですべて患者さんやその家族に話すことはありません。

 

概略は伝えても、詳細は伝えることはありません。何故ならすべて伝えても、患者さんサイドは100%理解することはできないからです。

 

したがって、順を追って説明することとなります。手術のインフォームドコンセントは入院後、ゆっくり時間を割いてとることとなります。

 

経験から申し上げれば、外来でその患者さんの今後の行く末は、ほぼわかっているのです。

 

患者さん側は、『命預けます』と決心した時には、少し外科医を口先だけでも良いので、ほめたたえる振りをしてあげればよいと思います。

 

外科医は、比較的単純なドクターが多いので、『先生にお任せします』とか『よろしくお願いします、先生!』とか、単純な一言で、外科医は頑張るものですよ。

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