外科医人生ー切除と機能再建に情熱をこめてー

外科医人生ー切除と機能再建に情熱をこめてー

 

 

外科系診療科は、内科系に比べて、仕事の内容はどちらかと言えば単純明快です。内科は、複雑系でありカオスであり、web外科医には困難なフィールドとして見えてしまいます。

 

外科系、特にメジャーな診療科、例えば消化器外科などは、一人前になるまでにかなりの時間を要します。ここでいう一人前とは、ほぼすべての消化器外科領域で、指導者がいなくとも、患者の属性に応じた治療戦略を立て、手術を部下だけとともに行うことのできる意味です。

 

基本手技から入り、手技を横に広げ、深みを出し、対応可能手術を時間をかけて増やして行くことになります。ただし、その過程は、単純明解ですよね。ステップバイステップです。

 

外科であれば、日本外科学会専門医取得が第1関門となる指標と言えます。
手技的には、迅速かつ確実かつ引っ張らない糸結びを習得し、はさみの使い方、縫合・結紮、外傷処置、小外科手術のマスター、デバイスの使い方、、、などマスターしながら、それらの各論的な手技の結集として、開腹幽門側胃切除、腹腔鏡下胆のう摘出術などに結びつくわけですね。

 

一方で、カンファレンスの準備として、症例提示や手術報告を経験しながら、学会なり論文を書いていけば、自然とプロ外科医としての技が身についてくるわけですよね。
日本外科学会専門医の習得が終われば、外科医人生を全うできるかと言えば、結論から言えば『No』です。外科専門医取得まで最低5−6年はかかります。外科医人生はこれからです。

 

外科専門医を取得すれば、まあ取得する頃には既に決まっていると思いますが、次はサブスペシャリティです。外科でいえば、心臓血管外科、消化器外科、呼吸器外科、小児外科のいずれか、また乳腺・甲状腺外科なりに、絞っていくわけです。

 

ここでは、消化器外科を考えてみます。消化器外科医の次のステップは、日本消化器外科学会専門医の取得です。この資格は、張り切って覚悟をある程度決めないと取れません。マインドの高い外科医の中で、合格率70%は、決して楽な障壁ではありませんよね。この資格を取得するころになると、通り一遍等の一般・消化器外科手術の執刀はほぼ可能となります。

 

学術的にも、大方の経験ができていますので、プレゼンテーションスキルや消化器外科に関する知識・経験もプロ並みとなります。

 

外科医人生もほぼ担保されますね。おおよそ医者になって10年で取得できます。ただし、ここまで取れば、急性期病院の消化器外科で確固たる地位を築けるかとなると “?” となります。

 

ここで、いわゆる寄り道をした方が良いと私は思っています。その寄り道とは、リサーチワークと海外留学です。

 

リサーチワークは、大学院に進み、実験なり臨床研究をして、原著英語論文を書き、医学博士(Ph.D)を取得することです。医学博士は、昨今日本では、『足の裏の米粒』、取らないと気になるが、取っても食えない、という意味らしいですが、それは明らかに間違っています。

 

大学院進学は、最近では外科専門医習得後、後期研修医終了後に、医局に所属して、行われるケースが一般的となっていますが、大きな急性期病院では臨床研究部があるところもたくさんあり、必ずしも大学の医局に入局しなくても、可能となってきました。

 

医学博士取得により、様々な可能性が付加されてきます。研究内容が認められて、海外留学につながったり、その後の病院でのポジションにも影響を及ぼしてきます。さらに、ドクター自身のプロフェッショナリズムに幅と深みがしっかりと出てきますし、自信がしっかりと付いてきます。

 

海外留学は、『日本の医療水準は欧米と比べて引けを取らないどころか、優れている』という意見もありますが、これは明らかに間違っています。ヒトは井の中の蛙にすぐ陥ってしまいます。『自分たちのやっていることが一番!』と変な錯覚を起こしてしまいがちなんですよね。

 

他人の土俵で相撲取る、グローバル医療をまじかに経験する、英語漬けになる、海外留学は、すべてが『目から鱗』となります。

 

さて、この辺でそろそろ40歳になってきました。そこからは、消化器外科医にとりもう一歩先の資格、日本肝胆膵外科学会高度技能専門医日本内視鏡外科学会技術認定医、食道外科専門医といった、希少性を持った資格取得を目指すこととなります。

 

ここまで持てば、急性期病院の外科診療科長として、ほぼ文句なくやっていけます。あと残すのは、そのドクターの熱意と情熱だけです。

 

心臓血管外科医も、体外循環という時間的制約の中で、いかに心臓の機能再建を素早く、やっていけるか、呼吸器外科医も、胸腔鏡下肺区域切除を如何に審美的に、迅速に、根治性を持ってやっていけるか、小児外科医も、食道閉鎖症の乳児に鏡視下手術で、機能再建を的確にできるか。

 

すべてが、切除と再建をするいわゆる“メス”にいかに情熱を込めるかに集約されるわけです。

 

耳鼻咽喉科の鼓室形成術も、婦人科の鏡視下子宮全摘も、泌尿器科のダビンチ手術かの尿道再建も、整形外科の人口膝関節置換も、脳神経外科のキーホール手術も、眼科の白内障レンズ置換も、皮膚科・形成外科の切断指再建も、外科系診療科は、ほぼすべて、ステップバイステップで、メスに情熱と魂を込めながらプロフェッショナリズムを築いていると思います。

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