医者の5つのメリットと2つの物足らないこと!

医者の5つのメリットと2つの物足らないこと!

 

 

医学部に進学することを本気に考えたのは高3の12月でした。それまでは、高度経済成長の終焉期ではありましたが、大企業や官僚が人気で、私の漠然とした希望は、大企業に入って、サラリーマンとなり安定した生活を送る、これがメインでした。

 

理系でしたので、〇京大学か京〇大学の工学部に入って、ソニーに入る。そう思っていました。そんな中、零細企業を営む親父から、サラリーマンより医者がいいぞと言われ、高3の12月に、コロッと方向転換しました。昔から単純ですので、直ちに洗脳されたように思います。

 

今思えば、ナイスなアドバイス、ナイスな方向転換だったと思えます。大企業に入っていれば、自分の性格から窓際を行ったり来たりしているに違いありません。

 

親父はその頃、〇州大学病院に通っていたのですが、入院したこともあり、教授回診の権威の象徴、白い巨頭に、金儲けはできるのに権威がないことへの劣等感を抱いていたのかもしれません。

 

そういうわけで、医者となったわけですが、良いところはさすがにいろいろあります。経験値を踏まえて、挙げてみたいと思います。

 

食いっぱぐれることはない。

 

年収は、程々良いです。したがって食いぱっぐれることはないです。当たり前だろ―!と言われそうですが、その通りです。程々の暮らしはできます。ただし、あくまでも程々です。

 

勤務医は、透明の税制の餌食となりますので、たっぷり税金でもっていかれます。節税の手法は、いろいろあるわけですが、給与収入のみでは、限界があります。

 

開業医は、日本医師会長が武見太郎で、総理大臣が田中角栄で、高度経済成長期には、どんぶり勘定でも丸儲けでした。老人医療費の自己負担はゼロで、病院は老人にとって憩いの場でありコミュニケーションの場でした。「○○さんは先ごろ見かけないね!」と病院で噂が立つときは、老人の体調不良を意味していました。

 

今では、開業医も余程、戦略・ビジョンを明確にし、ビジネスとしてPDCAサイクルを実践し、ホスピタリティを充実しなければ、途端に経営難、廃業に追い込まれることも珍しくなくなってきました。

 

私は経験なしですが、稼ぎ重視で行けば、いろいろな手法があるのも事実のようです。保険診療はある意味社会主義的財源が基盤なので、これ一本では稼ぎの医療は困難です。

 

悩み系を診療に取り入れ、自由診療を組み合わせる、政府の方針に従い、ベットの削減を見込んだ在宅医療で、ステイタスを築く(もちろん厚生労働省がはしごを外す前にです)、不動産を絡めた医療を展開する、こういったことで稼いでいる医者は身近にいらっしゃいます。

 

サービス(医療技術)を提供し、比較的多めの報酬を受け取り、感謝される。

 

普通はサービスや物を提供し、その対価として報酬を受け取ると、受け取った側が、「ご利用いただきありがとうございます」、「お買い上げいただきありがとうございます」となります。

 

医者はその反対で、サービスなり医療技術を提供すると、比較的多めの報酬に加えて、サービスを受け取った側から「ありがとうございます」と感謝されます。

 

もちろんこれには社会保険なり国民保険なり公的資金が注入されるわけですが、営業職や物販職のサービス業の皆様と比べると、ありがたいことですよね。

 

おまけに、資格が増え、ポジションが上がると、その度合いはますます上がってきます。患者さんからの感謝の度合いは、知識・経験・技術の向上と肩書にしっかり比例します。

 

いろいろな経験ができる。

 

これは医者に限ったことではないかもしれませんが、経験のバリエーションは実に豊富です。

 

実地臨床は、医者のベースワークですが、研究生活を送り、論文なりを書いてみて、英語では特に悪戦苦闘し、インパクトファクタ―の高い学術雑誌に掲載されようものなら、天にも昇る気持ちになりますよね。

 

国際学会出席と称し、海外旅行も正々堂々と行けますよね。「学会だから」と。本当は、名所めぐりであったり、ストレス発散であったり、しかも公的資金で行けるわけです。

 

一度アルゼンチンに10日間ほどビジネスクラスで行きましたが、自己資金でとなると痛い出費です。事務方に、「遠方へのロングフライトにつきエコノミー症候群が怖い」と言うと、「通常の普通運賃より安いビジネスクラスでのルートを証明出来たらOKです。」と言われ、そんなん、簡単に見つけ出すことが出来ました。

 

ルートは、東京ーマレーシアー南アフリカーブエノスアイレスとなりましたが。
海外留学も、家族と同伴で実に楽しかったです。手弁当(奨学金と自己資金のみ)で行ったので、いわゆるdutyはなく、こちらのペースで海外生活を金は乏しいながらも、悠々自適に送れたつもりです。

 

その他にも、年代やキャリアに応じて実にいろいろな経験ができます。

 

一応地位や名誉はあるようだ。

 

ドクターは人を救う、資格を得るためには受験戦争を勝ち抜かなければならない、博士を持つ人が多い、理由は幾つかあるかもしれないが、近所の方は「先生ですか!」と言ってくださり、海外でもMr.ではなく、Dr.と呼称されます。

 

少しでも業績が上がれば「名医」と呼ばれ、これを通り越して「スーパードクター」となることさえあります。「名先生」や「スーパーティーチャー」とはあまり聞きませんよね。

 

最近、中小企業の子息や教職員、公務員の子息がドクターになることも多いような気がします。私もそうでしたが、お金儲けても、安心・安全な立場でも、最後は地位や名誉に焦がれるのが世の常のようです。

 

定年がない。

 

少子高齢化、労働人口率の低下、結果として社会保障費の制限と年金受給額の低下が必至である日本において、これはメリット大です。

 

重度痴呆にならず、寝たきりにならない限り、生涯働けます。
まだバリバリ働ける人が、60歳で定年となり、年金支給が可能な65歳まで、あまり好きでもない仕事をせざるを得ない、或いは同じ職場で減額給与で働かざるを得ないのは、残念です。

 

定年がないことを医者のメリットとしているのは、個人的な意見ですので、反感もあるかもしれません。ある人は、「医者としてこれだけ貢献してきたのだから、国はしっかり面倒を見よ!」といってるかも。

 

まあ、働けるということは、モチベーションの維持、生きる気力と見れば、幸いなことだと思います。

 

2つの物足らなさに言及します。デメリットとまではしませんでした。デメリットと言ってしまえば、「甘えたことを言うな」と怒られそうな気がしたからです。

 

緊急呼び出しを食らう。

 

患者さんの病状は、平日9時ー17時まで、盆正月、土日祝日休みというわけにはいきません。これは診療科によって多少は違ってきますが、かなりの診療科でほぼ同じ境遇です。

 

夜中の2時、完全に夢の中で、電話が突然なります。家族団らん、今日は○○の誕生日、この時電話が突然なります。「意識がありません」、「緊急手術です」、「患者さんが失踪しました」などなど。これは、もうどうしようもないです。これに、対峙できない人は臨床ドクターに不適合となります。

 

患者さんが居るから、稼げて、暮らしていけるわけですから。

 

勤務医はお金持ちにはなれない。

 

これは多少非難を受けそうですが、事実です。特に、専業主婦、子供2人以上、保険診療オンリー、これでは確実に、金持ちにはなれず、ほぼ子供が巣立つまで、自転車操業です。

 

日本の医療システムはほぼ社会主義です。診療報酬点数表で決められ、インセンティブや勤務医師の収入格差を生じさせません。

 

それでも、20−30年前まで見られた、勤務医vs.開業医の収入格差は、かなり解消されてきています。日本医師会の理事の勤務医における割合が増え、勤務医の意見が政府に通りやすく、また、日本のもぐらたたき的風土(稼いでいる所を落とそう=開業医収入に対する妬み?)が相乗的に作用しているように思えます。

 

勤務医が何故、お金持ちになれないのか?いくつか理由があります。

 

日本の給与所得者に対する累進課税制度

 

年収が仮に2000万円と仮定しましょう。グローバルリッチリストによると、世界人口の中で0.05%となります。さぞかし、贅沢な金持ちかと思いきや、日本の累進課税制度では、社会保障費と併せて、ざっくり600~700万は持っていかれます。

 

診療報酬に資格や医師としての努力が反映されないシステム

 

日本では、資格取得や博士号で収入に明らかに差異が生じることはありません。米国では、明らかに資格で差異が生じますし、中国に至っては尚更です。国民皆保険制度は、世界に誇れる名だたる制度ですが、インセンティブが付きにくいのを含めると、医師としては努力の甲斐なく、益なしのような気がします。

 

教育費は税引き後給与から、莫大にかかる

 

教育費には経費の観念がありません。一人大学まで、特にオール私立となると地方都市の家一軒分は軽く吹っ飛びます。二人、三人になると尚更で、さらに医者の親の見栄が入ると、すぐさま借金地獄です。

 

政治家は投票率の高い、高齢者へ媚びへつらうような、文言を呼応していますが、将来の日本を考えたとき、富裕高齢者から財源を取得して、将来の子供へ投資するのが、将来の明るい日本を支えることだと思いますが。

 

例えば、第1子誕生には100万円、第2子には200万円、第3子には500万円の支援金を一律供与し、教育費はすべて無料にする。

 

これの方が、平均寿命を過ぎた方へ、ICUで保険組合で査定される高額医療を税金で大量投入するよりは、遥かにましだと思うのですが、いかがでしょうか。

 

まとめ

 

医者になって後悔したことは一度もありません。ただし、30年やってきて、「あの時こうすれば良かった」とか「こうすれば、もっと充実した人生が送れた」とか思うことは、たまにあります。

 

医者に限らずそうだとは思いますが、人は所詮、七転び八起きで、レトロスペクティブ(後方視的)に考えてみたら、改善点はいくらでもあることですよね。まあ、それは無理ですけど。

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