論文 -動機編-(motivation/purpose)

論文 -動機編-(motivation/purpose)

臨床医として論文を書く動機は、1)上司に言われて、2)資格取得、3)医学博士、4)内なる思い、5)教授を目指して、6)立場上などいくつかあります。一般的な流れと自身の経験をもとに、考えてみたいと思います。

 

国家試験に合格して、医師となり、臨床研修指定病院で研修していくことになり、同時に標榜診療科のカンファレンスに入っていくこととなります。この時にプレゼンテーションの機会に触れ、症例提示(ケース・プレゼンテーション)のHow toを学ぶこととなります。それと同時に、メディカルターム(医学用語)を順次覚え、自らがプレゼン側に回ることとなります。プレゼン側に回ると、当初は準備が大変です。症例提示のひな型(年齢、性別、主訴、既往歴、家族歴、生活歴、現病歴、現症、血液検査所見、画像所見、最終診断、エビデンスに基づいた治療方針など)に照らして、Power Pointや電子カルテ上のサマリーにまとめることとなります。上級医や指導医にお伺いを立てながら、やっとの思いで作っても、最初のうちは、所詮まだまだアマチュアです。

 

でも、それが当たり前で、それでいいんです。それが、論文作成への大きな前進(第1歩)となるのです。プレゼンも論文も、現実のストーリーを論理的に展開して、プロを相手に納得させる或はコンセンサスを導く作業であることに変わりはありません。さて、ここからですが、医者となり早くて3年目に専門領域を決めることになります。一般的には大学病院の医局に入局します。例えば、「消化器外科医に成ろう」と思ったとしましょう。そうなると、関連病院を含めてローテンションに組み込まれます。その頃になると、ある程度のプレゼンにも慣れ、ある程度の自信がついてきます。

 

さてこれからですが、日々の診療の中で、稀有な症例(珍しい病気や珍しい治療経過)に遭遇する機会があります。この時、1)上司から大体言われます。「今度、学会(大抵は地方会)に出してみようや!」と。この時、「大丈夫やろうか?」と思いながらも、「チャンス!」と捉えるのが、一般的な若手医師です。ここから格闘が始まるのですが、学会提出用の抄録を、過去の学会抄録集や文献をもとに、見よう見まねで書き、指導医に真っ赤に添削してもらって、抄録を提出期限以内(デッドライン)に提出します。あらかじめ、採用がほぼ保証されている学会に出すので、リジェクト(reject、不採用)には普通なりません。

 

これと同時に、或は学会終了後に、上司から、「この前の症例、論文にしたらどうね?」と言われることがあります。「言われることがある」というのは、症例報告として論文にする価値まであるかどうかということです。言われたら、何が何でも書いた方が良いです。書き方は「書き方編」で。

 

商業雑誌や採択率の高い学会機関誌に、邦文(日本語)症例報告でも、掲載されれば、2)資格取得に必要な論文(n=1)として認められます。例えば、消化器外科専門医を取得するのに必要な論文数は3つですが、邦文症例報告3つでも、英語原著論文3つでも、資格申請の必要条件に何ら変わりはありません。

 

この頃になると、「大学院に入って、リサーチしてみるね?」となります。これはあくまで私の経験であって、臨床研修終了直後に大学院に入るケース多々もあります。つまり、3)医学博士号を取得するために、臨床或は実験研究を通じて論文を書きなさいということになります。このための論文は、全身全霊を注がないとまず無理です。まずは、something new(今まで発見されてないこと、分かっていないこと、など)を自分のテーマに沿って、過去の文献から検索し、研究計画を具現化し、仮設通りの結果が出ればまだしも、結果が出ない方が多いです。試行錯誤を繰り返し、もがきながら、何とか結果が出れば、さあこれからです。

 

医学博士取得に必要な論文は、英語の原著論文(目的、材料または患者と方法、統計学を用いた解析含む結果、考察、結論、参考文献から成る論文のこと)、インパクトファクター原則2.0以上、副論文提出、などを満たす必要があります。英語で書くことが最大の障壁になります。日常英会話でさえ困る日本人にとって、英語で論理的な文章をいきなり書くことは到底無理です。だから、最初は似たような英語論文をひたすら集め、メディカルターム、表現、センテンスをまずは模倣します。そして、文章を自分のテーマ流に改変し、最初は1日ワンセンテンスできれば上出来です。ワンセンテンスをつなぎ合わせ、整合性を持たせ、introduction、resultなど作っていき、自分流に完成させます。しかしながら、これではまずIF2.0以上のジャーナルにはアクセプト(受諾)されません。指導医の添削と、英語論文の添削・改善業者に依頼するのが常です。

 

これをクリアーし、医学博士(Ph.D)を取得してくると、4)内なる思いが生じてきます。「自分はやればできる」と。これが続けば、邦文・英文原著論文や総説の継続的な作成へとつながります。その結果が、5)教授を目指してとなります。特に内科系の教授は、IFの高い英語原著論文や総説の数と質にかかっています。これが、一定水準にないと、教授選挙で、第1次審査で落ちます。もちろん、海外留学経験、科学研究費取得、学会でのシンポジスト、国際学会発表など他にも選考テーマの材料はありますし、外科系の教授は、臨床(特に手術)スキルも重要な選考因子になることは否めません。

 

6)立場上とは、専門領域のエキスパートや教授になれば、論文の執筆依頼が舞い込んできます。学会機関誌、グローバルジャーナル、教科書、科学研究費報告などいろいろあります。立場上で書かれた論文は、概ねプロフェッショナリズムを有する医師の教科書となり、バイブルとなります。

 

 

 

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