肝転移を伴う胃癌に化学療法行い、肝転移消失。手術?化学療法継続?

肝転移を伴う胃癌に化学療法行い、肝転移消失。手術?化学療法継続?

【質問】
はじめまして。

 

40才台の夫が、胃癌にかかっていることがわかり、PETで肝臓への転移がわかり手術不可ということで現在抗がん剤治療中です。

 

抗がん剤はシスプラチンの点滴とTS1を2週間、1週間の休薬の3週間を1クールです。

 

2クール終わった時点でCTにて肝臓のガンの消失が確認され、胃がんも小さくなり、現在食事は普通にとれています。副作用は4クールに入った頃から倦怠感、吐き気、白血球の減少が出てきました。

 

今後の治療についてご意見をお聞かせいただきたいのですが、主治医は肝転移があったことで、手術となると胃と肝臓もとらなければならない。しかし血液にのってしまっている以上はいつどこで転移がおきてもおかしくない。手術のリスクを考えると、このまま抗がん剤でガンをコントロールしながら少しでも長く生きる道を選んだ方が良いのではという意見です。

 

けれど抗がん剤では完治は叶わないこと、いずれは効かなくなるであろう事を考えると、賭けかもしれませんが、手術して原発ガンをとってしまった方が…とも思ってしまいます。シスプラチンもつらく、今回は食欲も落ちて元気がありません。子供も3人います。私たち家族にとっては本当に本当に大切な主人です。

 

抗がん剤で延命をするのか手術の選択はどうなのか、悩んでおります。ご意見をお聞かせいただければ有り難いです。宜しくお願いします。

 

【答え】
メール拝見しました。

 

胃癌の診断時、肝転移(遠隔転移)があったということで、進行度はステージIVとなり、化学療法が選択されたこと、手術不能の胃癌に対する化学療法の中で、生存期間の延長に最も寄与すると考えられているTS-1+シスプラチン療法が第1に選択されたことは、胃癌治療ガイドライン医師用2014年5月改定 第4版にも記載されていますように、現時点では、至極妥当と考えます。

 

2クール終了後、肝転移巣の消失と原発巣(胃癌)の縮小がみられたことより、化学療法は奏効しています。一方、治療開始4か月で、副作用(消化器症状、骨髄抑制)も顕性化しているようです。

 

今後の見通しとして、

 

副作用が許容範囲であれば、現治療の継続。副作用の増悪(現在の症状の増悪や腎機能障害、手足のしびれなどの新たな副作用)が見られれば、化学療法の減量もしくは休止。

 

がんの増悪(画像、腫瘍マーカー)が見られればレジメン(化学療法剤の組み合わせ)の変更。

 

以上が、検討されてくると思います。

 

緩和ケアの介入度は、がんの進行とともに高まってきます。

 

切除不能進行胃癌の化学療法の意義は、生存期間の延長(中央値6-13か月)が原則ではあります。長期生存(5年以上)もまれにですが、あります。

 

主治医のお考えは、標準的で妥当と考えます。“QOL(生活の質)をできるかぎり維持しながら、保険適応内の化学療法剤(イリノテカン、タキサン系など)を使い切り、結果的に、がんの進行に伴う臨床症状の発現(食事摂取困難、やせなど)を可能な限り遅らせ、延命をはかる。”というのが、ステージIV胃癌に対する化学療法のコンセプトです。

 

ご質問の骨子は、化学療法でダウンステージング(進行度が下がること)し、肉眼的に切除できる可能性が出てきた今、“手術をしたほうがよいのか、このまま化学療法を続けるほうがよいのか”ということと判断します。

 

治療の原則は、以上述べたとおりですが、肝転移を伴う胃癌に対する外科治療の臨床研究論文は下記のように幾つかあります。

 

論文 Ann Surg, Hepatogast, J Surg Oncol, Ann Oncol, Arch Surg
発表年   2002, 2003, 2007, 2008, 2012
対象患者 19人, 36人, 37人, 58人, 64人
5年生存率 34%, 26%, 11%, 21%, 37%

 

上記論文によるエビデンス(科学的根拠)のレベルはいずれもIV(Iが最もレベルが高い)で、患者さんの数が少ない、比較するコントロールがない、手術が可能な方のみを対象としているなど、ガイドラインで標準的な治療として推奨されるまでには至らず、あくまでも研究的治療の域を出ません。

 

一方で、11-37%の5年生存率が見られているのも事実です。いずれの論文も、消化器外科医が執筆し、一部の患者さんには、胃癌の肝転移に対する手術も考慮してよい、または考慮すべきという結論です。

 

もう一つ、切除不能胃癌(非治癒因子一つのみ)に対する化学療法単独vs減量手術(根治ではなく原発巣のみ切除するといった腫瘍量を減らす手術)+化学療法の無作為前向き比較試験(結果がでればエビデンスレベルIIとなり信頼性が高い)が日韓合同で臨床研究という段階で進められています。こういったことは、いまだ、ご質問のように、肝転移のために手術が回避される患者さんに、果たして、手術で胃癌を切除し、腫瘍量を減じて化学療法を行ったほうがよいのか、化学療法だけがよいのかいまだわかっていないためです。

 

同様に、今回のようにダウンステージが得られた後に、果たして手術を行ったほうが、結果(生存率の延長、根治性)が良いのか否か、エビデンスがないのが現状です。

 

消化器がん治療において、エビデンスが日々確立されてきていますが、いまだ、コンセンサスの得られていない領域がたくさんあります。Aという専門医が勧める治療に、Bという同じ領域の専門医が反対することもあります。内科医、外科医の意見の相違もあります。

 

今回、主治医の見解(手術を行うことで体力、免疫力が衰え、縮小しているがんの進行を早め、結果的に余命を短くしてしまう。手術自体のリスク。)も尤もな意見ですし、上記5編の論文が示すように、肉眼的に根治が期待できるのであれば、手術をすることで5年生存(根治とほぼ同義)の可能性もあることも事実です。

 

消化器がんの中では、大腸がんは、肝転移、肺転移があっても肉眼的根治可能であれば、切除しますし、膵臓がんは、初回発見時切除不能でも、放射線化学療法でダウンステージし、遠隔転移なく局所が根治可能であれば、切除します。この領域は、コンセンサスが得られつつあります。しかし、肝転移を伴う胃癌の手術はコンセンサスがありません。

 

胃癌でステージIVでも手術をすることはあります。たとえば、癌の進行のため胃が狭くなったり、詰まったりして食べ物が通らなくなる、癌から出血し制御困難になる、それらを解決する手術(姑息的手術)。あるいは化学療法などでいったんは縮小したものの、がんが増大したため手術をする(サルベージ手術)。そして、上記の減量手術。あるいは今回のようなケース。私もいずれも経験しています。ただし、これらの手術が
延命もしくは根治につながるというエビデンスはありません。

 

初回診断時の肝転移の個数、部位、予想される肝切除容積あるいは胃癌に対してどのような手術が必要かといった情報はわかりませんが、結論から言えば、主治医が腫瘍内科医あるいは消化器内科医であれば、消化器外科専門医が複数常勤する消化器外科認定施設でのセカンドオピニオンを受けられるのが良いと考えます。

 

昨今は、セカンドオピニオンの概念が、医師-患者に広く浸透していますので、主治医に率直に申し出てよいと思います。はっきりと、これまでの治療によってがんが小さくなったことへの謝意を踏まえた上で、“肝転移が消えた現在、手術が可能か否かを、一度、消化器外科専門医にセカンドオピニオンとして聞きたい”と伝えたらよいと思います。通常は、信頼できる専門医(同じ病院でも異なる病院でも)を紹介していただけると思いますし、ご自身でも認定施設を調査されてもよいと思います。

 

複数の専門医の意見(客観的な考えられる治療の選択肢)を聞き、それぞれの功罪(利点欠点)をご家族でよく話し合われ、納得吟味したうえで治療法を選択されることが良いと思います。

 

大変だと思いますが、頑張ってください。どのような状況でも、ベストとはいかないまでもマッチベターな選択肢があります。

 

最後に、あくまでもメールのみのお答えにつき、推論の域を超えないこと、“診察せずして診療すべからず”という大原則があること、最終判断は自己責任でということをご理解ください。

 

消化器(胃・大腸・肝臓・胆道・膵臓)がんに関してご相談ある時は、お問合せよりお願いします。直接連絡希望の時は、住所、氏名、電話番号まで記入の上、本文に直接連絡希望と明記ください。守秘は徹底します。守秘した上で、本ポータルサイトに掲載する可能性がある事、返答が遅れる可能性がある事、返答のない可能性がある事をご理解いただいた上で、ご相談ください。

 

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