十二指腸乳頭部がんの病理結果
【質問】:手術後の病理検査についてお聞きしたいと思います。
昨年十二指腸乳頭部癌との診断が下り、
PPPD(幽門輪温存膵頭十二指腸切除術)を受けました。
病理検査で詳しい内容が判ると聞いていたのですが
どう言った内容の検査結果がわかるのでしょうか?
十二指腸乳頭部癌は限局していない限り
「膵頭部癌」か「下部胆管癌」か「乳頭部癌」
かの識別が難しいとも聞きました。
宜しくお願い致します。
【お答え】:まずは、十二指腸乳頭部がんの術前診断でPPPDは至極当然の術式と思います。そして、術前に十二指腸乳頭部がんとの診断であれば、かなりの確率で、術後診断も同一となります。
何故ならば、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)で、十二指腸乳頭部に腫瘤性病変を指摘され、そこから生検が行われ、病理診断で悪性の結果が得られることが多いからです。
確かに、十二指腸乳頭部がん、下部胆管がん、膵頭部がんは、術前に迷うことは時にあります。造影MDCTを撮って、熟達した放射線科医に読影を依頼しても、迷うことはあります。十二指腸がんを含め、こういった癌を総じて、膵頭部領域がんと呼ぶことがあります。特に一番厄介なのが、下部胆管がんと非露出型十二指腸乳頭部がんの鑑別です。
普通は、術後しばらくして主治医から、病理結果の報告とそれを受けて、今後のフォローアップ計画や補助化学療法の是非の説明がされますが、それはどうだったのでしょう?
本題に入りますが、術後病理結果で、まず原発巣(胆管、十二指腸乳頭部、膵臓)が明らかとなります。病理医は、胆道癌取扱い規約(2013年11月、第6版)に沿って、必要な事項を表記する義務があるからです。病理医としても迷うことは確かにあるようです。この場合、どちらが優勢かによって、原発巣を表記します。病理組織学的所見の表記項目として、上記の原発巣の他に、十二指腸乳頭部がんであれば、部位、肉眼型、大きさ、組織型、局所進展度、間質量、浸潤増殖様式、リンパ管侵襲、静脈侵襲、神経周囲浸潤、リンパ節転移、断端(肝側胆管断端、膵断端、剥離面断端)、血管浸潤(門脈系浸潤、動脈系浸潤)、切除術の根治度評価(R0、R1、R2)、これらを所見として表記する義務があります。
膵頭部領域がんの中で、十二指腸乳頭部がんは最も予後が良く(根治する見込みが高い)、以下、下部(遠位)胆管がん、膵頭部がんとなります。予後の比較的見込める十二指腸乳頭部癌であっても、リンパ節転移や、脈管侵襲があれば、予後は落ちてきます。
したがって、原発巣の説明はもちろんのこと、局所進展度、リンパ節転移の有無、ステージ、根治度は、少なくとも提示し、今後の再発チェックのプランニング、補助化学療法の是非について(胆道がんは補助化学療法のエビデンスはほとんどありませんが)検討する必要が一般的にはあります。
【返信】:ありがとうございました。
【質問】:病理結果の表示項目の件よく判りました。
今後のフォローアップと補助化学療法の是非につきましては説明も受け現在毎月の血液検査と3か月毎の造影CTで診察して頂いており、1年すぎた現在でも再発・転移は有りません。補助化学療法につきましてもエビデンスがないと言う事も説明を受け現在はしておりません。
ステージ、原発、リンパ節転移有無、などを聞いていなかったのが気になっておりご質問をさせて頂きました。どうも病理結果内容に「膵臓」と言う言葉が入っていたようで
そのことが今でも気にかかっております。
たとえばですが「膵頭部癌」が十二指腸乳頭部に浸潤していた場合でも乳頭部位が露出型のようになるのでしょうか?
ERCP画像をみせて頂いた時に乳頭部分が花が開いたような形になっていたのは確認しております。
もしよろしければ教えて頂ければと思っております。
何度も申し訳ありませんが宜しくお願い致します。
【お答え】:補助化学療法にエビデンスがないと言われたことにより、膵頭部がんではなかったものと推察します。膵頭部がんでは、TS-1かジェムザールによる補助化学療法を行うのが一般的です。十二指腸乳頭部がん>下部胆管がんであったと思われます。
ここは、次回受診日、主治医の先生に単刀直入に「原発巣は?リンパ節転移の有無は?」と聞かれてみるのがよろしいかと思います。余裕があれば、「病理結果報告書のコピーを頂きたいのですが?」と聞かれるのが一番すっきりすると思います。十二指腸乳頭部がんであれば、リンパ節転移(n)がなく、静脈侵襲(v)、リンパ管侵襲(ly)、神経周囲浸潤(ne)がなく、根治度R0の手術が成されていれば、60%以上の根治は見込めます。
また、1年無再発であれば、その可能性は高いです。3年無再発であれば80%以上は大丈夫です。
原発巣とリンパ節転移の有無は、ほぼ必ず教えてくれますよ。どうしても渋ったら、ずばり「膵頭部がんと乳頭部がんは、予後が明らかに違うということを本で見たもんで、気になってしょうがないんですと」本音を真摯に伝えれば良いと思いますよ。
ちなみに、膵頭部がんが、十二指腸乳頭部に浸潤して、露出型の腫瘤として、見られることも、稀にはあります。ただし、憶測でいろいろなシチュエーションを推測するのは、どうどう巡りとなり、解決納得するどころか、疑心暗鬼となり、悪い方向に考えがちになります。何度もアドバイスしますが、単刀直入に原発巣、リンパ節の有無を、主治医の先生に直接聞かれることをお勧めします。
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