医師人生
医師人生にもいろいろあります。
私は外科医となり30年経ちましたが、いろいろありました。若い時の修業時代。最初の採血では、手がこれでもかというほどにブルブル震えたことは今でも忘れません。その時看護婦さんがやってきて、「どれどれ」といった風にさりげなく採血し、いささか悔しい気持ちにもなりましたが、看護師さんに医療で教わったことはいろいろありました。
腹部エコーや胃透視、注腸透視は放射線技師さんにみっちり教わりました。
若い時は、ほとんど何もわかっていなかったので、「わからないときや患者の状態が悪い時ははベッドサイドに居なさい」と教授に言われ、ひたすらICUに宿泊していた時もありました。
手術も、ひたすら助手なので、ぼや―としながら、「早く終わらんかなー」と不届きなことを思ったりもしていました。
やがて慣れてくると、少しエラそうな振る舞いをしたような気がします。患者さんに対しては、「任せてください」、看護師さんに対しては、「これでやってください」と。
外科医、中でも消化器外科医で人生を生きていこうと思ったのは、だいたい卒後5年目あたりです。虫垂切除や胆嚢摘出をオペレーターでさせてもらい、胃切除や大腸切除も指導的助手付きでさせていただくようになり、患者さんからも感謝の言葉をいただくようになりました。
次にリサーチをしました。医学博士取得のために実験研究を行い、論文を書いて、Ph.Dを取得することが目的です。この時は、英語論文をよく読みました。単語わからず、文章書けずで難渋しましたが、想いがしっかりあったので、1日1センテンス英語文章を書くペースで、論文が出来上がり、Ph.Dを取得しました。医学博士は、日本では最も取りやすい博士号と言われています。
Ph.Dがあっても、外科医としての技術・スキルに影響は無いかもしれませんが、無いよりあった方が良いのが医学博士号です。
次に、消化器外科専門医を取得しました。これは合格率70%で、試験の準備(いわゆるお受験)をしないと、はっきり言って取れません。それなりのモチベーションを持った消化器外科医が集まるためです。
後に、肝胆膵技術指導医、内視鏡技術認定医、外科指導医、消化器外科指導医を取得しました。
この中で、内視鏡技術認定医は、モチベーションと技量と運の3拍子揃わないと取れません。合格率は30%下回っています。
アラフォーで米国にvisiting surgeonという立場で1年間留学しました。家族5人で留学し、結構お金がかかりましたが、借金取りに追われるまでには至りません。911テロの前の留学だったので、USMLEは取得していませんでしたが、臨床医療にタッチしていました。
この1年で、いろいろな考え方が変わりました。手術のやり方、人との付き合い、外科医療の考え方、交渉力。家族もグローバルの風に吹かれ、影響を受けたようです。
今は、急性期病院で消化器外科医療を行っています。
外科医は手術をやっているときが一番楽しいと思っています。
私見とこれまでの経験はここまでにして、医師人生は、人それぞれ皆いろいろです。この辺りを中心に発信できればと考えています。