消化器がん検査
消化器がんの検査は、一般的に安価、低侵襲のものから始まり、高価、高侵襲、技術的に困難なものへと、必要に応じて段階的に進みます。
安価、低侵襲は、簡便かつスクリーニングで、高価、高侵襲は専門的となります。
消化管(食道、胃、大腸など)がんと実質臓器(肝臓、膵臓など)がんの検査でも、広義で解釈すると検査の進め方は同じです。
A)消化管がん
1)食道がんの場合
安価、低侵襲は、スクリーニングでの上部消化管内視鏡検査(通称胃カメラ)となります。併せて血液検査で食道がんの特異的腫瘍マーカーSCCや貧血の有無となるでしょう。
胃カメラで食道に進行性の腫瘍性病変が指摘された場合は、生検(組織を採取し、病理検査に回す)を行うこととなります。粘膜に何か異常がありそうだとなった時は、ルゴール散布まではされるでしょう。ルゴール散布は食道の正常粘膜は染まり、がんあるいは異型上皮は染まらないことによって、異常粘膜病変を描出する手法です。
進行食道がんであれば、3領域(頚部、胸部、腹部)造影CTが当然撮像されますし、場合によっては(というよりもほぼルーチンに)PETが行われるでしょう。ここまで終了すれば進行度が判明し、治療戦略構築となります。
では、何かあるらしいとなればどうなるかと言いますと、詳細な評価ができる内視鏡に切り替え、後日精密内視鏡検査が行われます。精査に含まれているのは、拡大内視鏡、NBI、さらには内視鏡的超音波検査(EUS)も含まれてきます。早期の食道がんであれば内視鏡的治療(内視鏡的粘膜下層剥離術、ESD)も視野に入れた検査となります。EUSでの検査は消化器内科専門医しかできません。
2)胃がんの場合
安価、低侵襲は、血液検査での腫瘍マーカーCEA、貧血の有無、上部消化管造影検査(通称バリウムを飲む検査)、ルーチンの上部消化管内視鏡検査(通称胃カメラ)となります。
進行性の腫瘍が見つかれば、食道がんと同様生検の上、進行度評価のため造影CTとなるでしょう。何かあるらしいとなれば、これまた食道がんと同様、精密な内視鏡検査+EUSとなるでしょう。
早期胃がんも、昨今内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の適応が徐々に拡大しています。
3)大腸がんの場合
安価、低侵襲は、便潜血2日間法がグローバルスタンダードです。次のステップは血液検査での腫瘍マーカーCEA、貧血の有無、下部消化管内視鏡検査(通称大腸カメラ)となります。
大腸カメラは医師の技量により、苦痛の程度や病変指摘能力がかなり変わってきますので、信頼された病院、医師により行わってもらうべきと考えます。進行性腫瘍があれば生検の上、同様に造影CTにより、リンパ節転移や腹膜播種、肝転移、肺転移を主とした遠隔転移の有無評価となります。
必要に応じてCTコロノグラフィー、3Dアンギオが追加されます。早期大腸がんであれば、内視鏡的粘膜切除(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を視野に入れた検査(Pit paternの検索や拡大内視鏡、色素散布、NBI)となります。実際にESDの適応となると、かなりの技量を必要とします。大腸壁は薄く、大腸穿孔(大腸に穴が開くこと)が起きやすいからです。
早期胃がんのESDはかなり普及していますが、早期大腸がんのESDはまだまだです。
B)実質臓器がん
1)肝臓がんの場合
安価、低侵襲は、血液検査での腫瘍マーカーAFP(アルファフェトプロテイン)、PIVKAII(ピブカツー)、HBs抗原、HCV抗体、腹部超音波検査(エコー)となります。
これらの検査により肝臓がんが疑われた場合、造影CT、MRI、造影エコーなどと進んでいきます。肝臓がんかその他の肝臓腫瘤か鑑別がつかない場合、エコーガイド下肝生検(肝臓腫瘤から組織を取ってくる検査)を行う場合もあります。
2)膵臓がんの場合
安価、低侵襲は、血液検査での腫瘍マーカーCA19-9、腹部超音波検査(エコー)となります。膵臓は元々後腹膜下にあるため、肥満の方などは描出しにくいです。
そこで次のステップはシンスライス造影T(スライス幅をたとえば1mm程にする)となります。MRI/MRCPもほぼルーチンに組み込まれます。ほぼこれで存在並びに質的診断がつきます。
ここで迷いが生じた場合、超音波内視鏡(EUS)下FNAB(針を使った生検)を行うことまであります。ここまですれば、ほぼ診断がつきます。補助的な診断としてPETも行うことがありますし、手術の可否を見極める目的で審査腹腔鏡(全身麻酔下に腹腔鏡を腹腔内に挿入して手術ができるか否か判断する検査のこと)を行うこともあります。
胆道がんも同様に、安価、低侵襲から高価、高侵襲で検査が進められます。
消化器がんの検査は、最終的には急性期のがん拠点病院などの専門施設で行う必要があるのは、検査の医療機器の整備、消化器内専門医の常勤がマストだからです。
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