消化器(食道・胃・大腸・肝臓・胆道・膵臓)がんの予防、早期発見、症状、診断、治療

膵臓手術のバリエーション

膵臓手術には、対象病変の占拠部位、悪性度により、結構いろいろなものがあります。標準的には、膵頭部に病変があれば「膵頭十二指腸切除」、膵体尾部に病変があれば「膵体尾部脾切除」、膵全体に病変がまたがれば「膵全摘」となります。

 

膵頭十二指腸切除にも、胃をある程度切除する標準型の膵頭十二指腸切除(Whipple手術、Pancreaticoduodenectomy、PD)、胃を全部温存する幽門輪温存膵頭十二指腸切除(Pylorus-preserving Pancreaticoduodenectomy、PPPD)、胃をかなり温存する亜全胃温存膵頭十二指腸切除(Subtotal Stomach-preserving Pancreaticoduodenectomy、SSPPD)、があり、流れはPD→PPPD→SSPPDになってきています。PD→PPPDになった理由は、胃を温存することで体重減少が抑えられる、胃を切らなくても根治性が保証されるといった理由。PPPD→SSPPDになってきた理由は、胃を全部温存するPPPDでは、胃内容排泄遅延といって、食べ物が、なかなか胃から排出されない合併症が目立ったことが理由。

 

膵臓手術のバリエーション

 

膵頭部に病変があっても、悪性度があまり高くない腫瘍、これを低悪性度腫瘍と言いますが、これらに対しては、いろいろな機能温存膵臓手術が出てきました。膵頭十二指腸区域切除は、十二指腸を乳頭部を含む下行脚だけ切除しようという手術です。

 

膵臓手術のバリエーション

 

十二指腸温存膵頭切除は、十二指腸、胆管も温存しようとする手術です。これは、どちらかと言えば非常に煩雑で、普及はしていません。

 

膵臓手術のバリエーション

 

低悪性度病変が膵体部に限局している場合、膵中央区域切除があります。膵体部だけ切除しようとする手術です。膵液が漏れる「膵液ろう」の合併症リスクは高まりますが、これは一定頻度で普及しています。術後の糖尿病発生率が減ることが最大のメリットです。

 

膵臓手術のバリエーション

 

膵尾部に低悪性度病変がある場合、脾臓を温存する脾温存膵(体)尾部切除があります。脾動静脈を温存する手術は、日本から発せられました。

 

膵臓手術のバリエーション

 

膵頭部に悪性腫瘍が、膵尾部に低悪性度腫瘍が、たまたま同時に存在したときにどうするでしょう。通常は膵全摘が選択されるでしょう。この場合、中央区域温存膵切除が考えられます。膵頭十二指腸切除と膵尾部脾切除を同時に行い、膵体部を残す手術です。これは、まだそれ程行なわれていませんが、膵臓を5〜6cm、3分の1程残すことで、インスリンを必ずしも必要とせず、体重減少もある程度抑えることが可能です。

 

膵臓手術のバリエーション

 

 

内科的治療抵抗性の慢性膵炎に対して、膵管ドレナージ、膵切除ともに、その有用性に関するエビデンスが出ています。慢性膵炎は患者さん毎にバリエーションに富んでいますので、手術のプランニングもオーダーメイド的な要素が多分にあります。手術の目的は、除痛であり、充分な経口摂取と栄養改善を可能ならしめることです。

 

1) 膵管ドレナージ(Partington手術、膵管空腸側側吻合)

 

膵臓手術のバリエーション

 

2) 膵管ドレナージ(Frey手術、膵頭部芯抜き+膵管空腸側側吻合)

 

膵臓手術のバリエーション

 

3) 膵切除(PPPD+Partington手術)

 

膵臓手術のバリエーション

 

ほかにも、急性膵炎、感染を伴った仮性のう胞に対する内瘻術、縮小手術として核出術や膵鈎部切除、などあります。

 

膵臓手術のコンセプトは、悪性疾患であれば、根治性を求める良性〜低悪性度腫瘍、感染性疾患であれば、機能温存を求める膵全摘はQOL(生活の質)が著しく低下するため、可能な限り避ける、といったことです。

 


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