直介オペ室ナースの上達法
直介オペ室ナースは、看護部門の中で、ある意味特殊な分野です。例えるならば、オーケストラの指揮者に相当するかもしれません。外科医は、分かっています。彼・彼女はできると。できる直介オペ室ナースは重宝されますし、外科医が信頼を寄せますし、アイデンティティをしっかり持っています。では、どうすればそう成れるかを考えてみましょう。
まずは、小外科手術から入っていくことになります。それと同時に、手術器具と材料覚え、手技の概略と手順覚えが基礎となります。手術器具と材料にはいろいろありますが、術野の展開、攝子(せっし)、剥離、切離、デバイス、結紮縫合糸、ドレーン類、などに分けながら、考えるとよいでしょう。通常、術式に応じて、手術器具と材料がセット化されています。ただし、何故これを使うのか?と一度は考えてみたほうが良いです。消化器外科手術の場合、術野の展開は、腹腔鏡、開腹で分かれますよね。腹腔鏡であれば、ビデオスコープ、送気・排気チューブが基本となりますし、開腹であれば、ゴッセ開腹器(最近はあまり使われなくなってきました)、ウーンドリトラクター、ケント鈎(こう)など。じゃあ何故、ケント鈎を使うの?となるわけです。上腹部の展開をより良くするためにケント鈎を使うわけです。肝切除とか食道胃接合部癌の手術とか。攝子は、鈎ピン、外科攝子、ドベーキー、etc。じゃあ何故、鈎ピン?外科攝子?ドベーキー?となるわけです。組織をしっかり把持したければ(皮膚や白線などの腱膜縫合など)鈎ピン。臓器や組織を傷つけたくなければ外科攝子、ファイン(精密)な操作をしたければドベーキーとなるわけです。こういったことは、剥離鉗子(モスキート、ペアン、直角、etc)、切離器具(はさみ、メッチェンバウム、etc)、デバイス(ハーモニック、リガシュア、エンシール、サンダービート、etc)、縫合結紮糸(絹糸、ナイロン、非吸収性モノフィラメント、etc)、ドレーン(情報ドレーン、治療目的ドレーン、etc)、すべてに当てはまるわけです。すべてに目的があるわけです。したがって、手術の局面に応じて、この器具・材料を使う目的を知る努力が必要なわけです。
手技の概略と手順は、詳細な事や非定型的な手術を覚える必要まではありませんが、標準術式の概略と手順は、教科書と施設のマニュアルを通して、しっかりマスターすべきでしょう。開腹幽門側胃切除を例にとりますと、上腹部正中切開でアプローチし、ここでウーンドリトタクターを装着。進行癌であれば、腹腔洗浄細胞診を提出する。大網の剥離に始まり、支配血管の処理、十二指腸、胃切離は自動縫合器を使って、消化管再建は、器械で?、手縫いで?、ビルロートI法で?ルーワイで?ドレーンは何を何処に?などなど。
最後に最も大事なことは、1)術野からなるべく目を離さない(外回りナースと話すときも耳だけ傾ける)、2)外科医にはいろいろなキャラクターがいる事を承知する(外科医は決して声を荒げてはいけない)、3)優しく(ジェントルな)、目をそらさない器具の受け渡し、4)集中とリラックス、5)次の展開を予想し準備する、などがキーポイントと考えます。
こういったことができるようになり、積み重ねていきますと、手術をコーディネート、つまりオーケストラの指揮者のような実感が得られ、仕事に充実感が得られてくること間違いないです。
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