腹腔鏡下胆嚢摘出術
腹腔鏡下胆嚢摘出術(Laparoscopic cholecystectomy、通称ラパコレ、ラパ胆)は、原則、有症状胆嚢結石症に対して行われます。消化器がん外科治療ではありませんが、消化器外科医が携わるルーチン手術なので紹介します。
安全性(手術死亡率0.01%以下)、整容性、低侵襲性が担保されることは異論のないことですが、リスクがゼロではありません。
外科医が避けたい術中リスクとして順に、1)胆管損傷、2)肝動脈のクリッピング、3)胆嚢壁損傷、4)出血が挙げられます。
胆管損傷は、約1%に起こります。モニター監視外で胆管を熱損傷した、胆管を胆嚢管と誤認して切ってしまったなどです。胆管を損傷すれば、通常開腹に移行して、損傷の程度に応じた修復術(これをリカバリーショットと言う外科医もいます)をしなければいけません。最も厄介な修復術は、肝外胆管が細い時の、胆管空腸吻合です。術後経過が良ければ、救われますが、胆汁うっ滞性肝硬変に至り、肝移植を受けた人まで世界にはいます。
ラパコレは、胆嚢管と胆嚢動脈にクリップをかけて切離し、胆嚢を肝床部から剥がせば終わりです。早ければ20分ほどで終わります。胆嚢動脈は普通右肝動脈から出ていますが、右肝動脈を胆嚢動脈と誤ってクリップをかけ、切ってしまうことがあります。これをしてしまいますと、肝右葉の機能障害から肝不全に至ることもあり得ます。
胆嚢壁の損傷は、時々起ります。胆嚢壁が薄い時、把持鉗子による損傷、剥離層が不正確、剥離中の熱損傷などが原因です。胆嚢壁の損傷で問題となることが3つあります。感染胆汁であった時の腹腔内汚染、早期がんが併存した時のがん細胞の腹腔内散布、結石の腹腔内への落石(特に小さな結石の場合、回収は不可能)です。
出血は、避けたいリスクの1番になるのでは?と思う人もいるかもしれませんが、ラパコレの出血は、ポート挿入時の大血管損傷を抜きにすると、あまりたいしたことはありません。肝床部からの肝実質損傷による染み出るような出血(これをoozingといいます)が主な出血様式です。胆嚢炎がひどい時の門脈損傷もあり得ますが。
胆嚢摘出の8割が現在ラパコレで行われています。若い外科医はラパコレから入るケースが多いです。胆嚢炎のひどい時、胆嚢がんが疑われる時、開腹歴(特に複数回)がある場合は、原則開腹胆摘を行います。
たかがラパコレ、されどラパコレです。
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