消化器(食道・胃・大腸・肝臓・胆道・膵臓)がんの予防、早期発見、症状、診断、治療

「手術は成功しました」は概して誤り

よくテレビドラマを見ていると、外科医が手術後家族に対して、「手術は成功しました。ご安心下さい。」というフレーズがあります。

 

実際のシチュエーションからは、99%誤った表現となります。「手術は予定通り終わりました。これから、○○、△△といった合併症があり得ますので、引き続き注意して観察していきます。」が、これが正解です。

 

手術は、それを行うからには成功するのが当たり前で、失敗するような手術をしてはいけません。術前検査で、病変の広がり、患者さんの状態から、至適な術式を導き、起こりうる合併症などを検討して、インフォームドコンセント(説明と同意のこと)で承諾書にサインを頂いた段階で、手術の8割以上は終わったものと考えています。後の2割は、淡々と手術を進めるだけです。だから、「成功しました」ではなく、「予定通り終わりました」となります。そして、「ご安心下さい」は、むしろ禁句です。患者さんの家族は、手術が終わり、ホッとするお気持ちはわかりますが、手術後は実際何が起きるかわかりません。高齢者となればなるほど、日常生活の中でも、脳卒中や心筋梗塞、肺塞栓などの突然死を来す病気が起こることがあります。手術後の不安定な時期にそういった致死的な病気は、さらに起きやすくなります。したがって、「安心してください」は禁句となります。どんな小さな、侵襲の少ない手術でも、死亡率0%とは決してなりません。

 

成功したという表現をあえて使うのであれば、患者さんが、何事もなく、歩いて元気に、退院されたときです。

 

「概して」の理由は、1%ほどは、「成功しました」的な、手術もあるということです。チャレンジングな手術です。私の経験からでは、人工心肺を使って心停止下に、肝右葉切除と右心房内腫瘍塞栓を摘出した。同様の手法で、肝臓の前区域切除を行った。肝臓の尾状葉原発の径10cmの肝細胞がんに手術した。胃十二指腸動脈瘤が十二指腸に穿破した患者さんに緊急で膵頭十二指腸切除を行った。1年6か月前に手術が出来なかった3回の切除歴のある巨大脂肪肉腫(4.8kg)を残存小腸3.3mで切除した。膵臓の体部のみを残す手術(膵頭十二指腸切除と膵尾部脾切除の同時手術)を2回行った。完全腹腔鏡下膵頭十二指腸切除を2回行った、などあります。

 

ただ、忘れてならないのは、チャレンジングな手術であっても、暴挙となるような手術は、決して行ってはならないということです。チャレンジングな手術は、経験したことがない、標準的な手術ではない、リスクを具体的に想定しにくい、ただし、文献を検索すると、世界では報告例がある、自分の経験と知識を踏まえれば、できると思える。患者さんの希望や状態からやらなければならない。こういった手術と考えています。

 

一方、暴挙となる手術は、専門外、シナリオが想定・準備できない、手術死亡率が50%を超える、などの手術です。チャレンジングと暴挙は、明確な区分けができない時があるかもしれません。肝移植は、第1例目は当時暴挙であったかもしれませんが、今では保険診療下の手術です。ヒヒから人間への異種肝移植は、今考えると暴挙であったかもしれません。首から下を移植する予定があるなどと、報道もあったようですが、これは暴挙と考えています。

 

 

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