消化器(食道・胃・大腸・肝臓・胆道・膵臓)がんの予防、早期発見、症状、診断、治療

創傷治癒(キズの治り)

創傷(キズ)は、次の3つの過程で治癒します。

 

第一期:炎症反応期

 

  • まず血小板(けっしょうばん)の凝集と血管収縮で血が止まります。

 

皮膚や臓器が損傷を受けると、組織の破壊が起こり、血管も断裂して局所に出血します。 血液に含まれている血小板は、断裂した膠原繊維に付着すると活性化し、活性化した血小板から放出される凝固因子の働きでフィブリンが形成され、このフィブリンがさらに血小板、赤血球等を巻き込んで血栓を作ります。同時に血管の斷端も収縮します。これが止血作用です。

 

創傷治癒(キズの治り)

 

NPO法人創傷治癒センターより抜粋

 

凝固時の血小板からは凝固因子以外にも色々な化学物質が放出されます。 また、破壊された色々な細胞の細胞膜では、アラキドン酸系の連鎖反応が起こり、ここでも色々な化学物質が放出されます。 これらの化学物質が周囲の組織に浸透して、異変が起こったというシグナルを送ります。

 

このシグナルに刺激されて毛細管の壁を作っている内皮細胞の間にすき間が生じ、リンパ球、多核白血球、単核球が浸出液として血管から抜け出して傷口へと移動します。 これを遊走といいます。

 

リンパ球、多核白血球、単核球のうち、創傷治癒で一番重要なのは単核球です。 単核球は破壊物を取り込む、いわゆる貪食作用によってマクロファージ(=貪食細胞)となり、これがさらに色々な化学物質を放出して、次のシグナルの発生源になります。

 

以上が第一期(炎症反応期)の生化学的な説明ですが、この時期にわれわれが傷口を見たとき目にしたり体に感じたりする症状にはつぎのようなものがあります。
1. 浸出液で組織が腫れる(腫脹)。
2. 毛細管の拡張で赤くなる(発赤)。
3. 組織反応で熱を生じる(発熱)。
4. 末梢神経が刺激されて痛みを感じる(疼痛)。
この、腫脹、発赤、発熱そして疼痛を、炎症の4主徴といいます。 炎症は創傷治癒の初期過程に見られる大切な生体反応なのです。 これがほぼ受傷後4,5日の過程です。

 

外科手術後4日間は、痛みも強く、38度までの発熱は通常見られるのも、その為です。
 
 
第二期:肉芽形成期

 

  • つぎにマクロファージ、貪食細胞が創面の死んだ組織を取り込んできれいにします。
  • それから繊維芽細胞が分泌するコラーゲンを主体とした肉芽(にくげ)組織による修復が始まります。

 

第一期のマクロファージ(=貪食細胞)の活動で放出された物質が刺激となり、線維芽細胞が呼び寄せられ、修復の主な材料である膠原繊維(コラーゲン)が生み出されます。 また血管内皮細胞に対して血管を新生する指令もマクロファージから放出されます。

 

繊維芽細胞の産生したコラーゲンに支えられて毛細血管が発達し、そこへ流れ込む新鮮な血液が線維芽細胞に栄養や酸素を供給し、更にコラーゲンの産出をうながすという自己増殖のサイクルが構成されます。

 

創傷治癒(キズの治り)

 

NPO法人創傷治癒センターより抜粋

 

このように繊維芽細胞、毛細血管がコラーゲンを足場とし、この3者が支えあって共同作業を行い、いわば軍団のように傷口へ進出し、欠損部を埋め創面をくっつけます。

 

この欠損部を埋めていく組織を肉芽組織といいますが、肉芽組織はコラーゲン以外の色々な物質やコラーゲン間の架橋などで結合補強しあい、だんだんと真皮に近い丈夫な組織になっていきます。

 

 

第三期:安定期

 

  • 肉芽組織が瘢痕組織へと変化し、安定した傷になります。

 

受傷後2−3週間たつと、線維芽細胞の活性が落ちてコラーゲンの生成が少なくなり、そのうちコラーゲンの生成と分解がバランスよく行われるようになります。この状態が安定期(瘢痕組織形成期)です。

 

生成と分解のバランスが崩れると、例えばビタミンCの欠乏などでコラーゲンの産生が低下すると、分解吸収量のほうが多くなって瘢痕組織が吸収されてしまい、傷が開くこともあります。瘢痕組織は見た目には変化がなくても、常に生成と分解を続けている活動中の組織なのです。

 

こうして再生した表皮細胞の下の組織は、いつまでも瘢痕組織として残ります。 つまり第3期は傷跡として永久に続くと考えてよいでしょう。 再生した表皮は傷を受ける前とほとんど同じになりますが、瘢痕組織はコラーゲンの配列が不規則なので、表皮を通してみた場合、真皮とは多少違って見えます。 これが「傷跡」です。

 

つまり実際に患者さんが気にすること、すなわち色が違うとか、傷の幅とか、凹んでいるあるいは盛りあがっている,などの事柄は表皮ではなくて、ほとんどが真皮レベルの瘢痕組織の問題なのです。 したがって、これからの創傷治癒の課題は、瘢痕組織をなくしてしまう事ではなくて、瘢痕組織の量を減らし、なおかつこれを正常の真皮に近づける事と思われます。

 

創傷治癒(キズの治り)

 

創傷治癒を阻害する因子として、1)糖尿病、2)副腎皮質ステロイド、3)ビタミンC欠乏、4)低栄養、5)感染、などがあります。

 

なぜかというと、糖尿病は、毛細血管レベルの血流の悪化、ステロイドは炎症反応の阻害、ビタミンCはコラーゲン生成抑制、低栄養は毛細血管新生の抑制と代謝レベル、感染は正常治癒過程の阻害となります。

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