消化器(食道・胃・大腸・肝臓・胆道・膵臓)がんの予防、早期発見、症状、診断、治療

リスキーな手術

いわゆる危険な手術のことですが、これには総じて3種類あると思っています。

 

1) 外科治療対象となる疾患が重篤なもの

 

例えば、下部消化管穿孔、肝がん破裂、内臓動脈瘤破裂などです。下部消化管破裂を例にとってみますと、通常急性腹症で発症し、重篤になればショックバイタル(血圧低下、意識混濁など)となり、手術までの時間が長引けば長引くほど致死率も高まってきます。糞便による腹腔内汚染によりエンドトキシン血症となり、体内でサイトカインストームが起き、白血球は一期に消費されるため、重篤化すれば産生が追い付かず、むしろ白血球数は低下してきます。予後不良の兆しともなります。
下部消化管穿孔はいくつかの原因で起きます。硬便による腸管内圧の上昇でも特に高齢者で時に起きますし、憩室の穿孔や腸管虚血によっても起きます。
手術は緊急で、通常患部を摘出後、直接吻合することはあまりなく、人工肛門を造設することが一般的となります。手術後はICUでエンドトキシン吸着に血中の細菌から出た毒物を吸収し、カテコラミン投与により昇圧を図るのが常となります。回復に向かえば良いですが、状況が悪化すると多臓器不全となり命を落とします。
肝がん破裂や内臓動脈瘤破裂は、出血の制御をいかに早く行うかにより、短期的予後が決まってきます。肝がん破裂は、血管内止血法も緊急対処法の一つですが、開腹で肝切離を行うケースもあります。内臓動脈瘤(特に脾動脈瘤)破裂は時間との戦いとなります。設備の良い病院ではハイブリッド手術室があり、大動脈を一時的に風船で血流を遮断し、そのまま開腹し、脾臓摘出を行うこともあります。

 

2) 患者さんの状態が悪いとき

 

超高齢者、心、肺などに重篤な持病を持ってらっしゃる方に対する手術は、内容がさほど困難でなくとも、しばしばリスキーな手術となります。胃がんや大腸がんで通常の方に手術をしても、手術死亡率(術後30日以内)は概ね1%以下ですが、患者さんの状態が悪いときは、10倍にも20倍にもなる可能性が出てきます。私自身はどう高く見積もっても、手術死亡率が30%以内と思われれば、待機手術はします。しかしこの場合、外科医はストレスを貯めることになります。周術期管理もいっそうに気を使いますし、不幸な転機となれば家族もあるいは病院からもよくは思われません。ただし、目の前の患者さんが、外科治療でしか、延命もしくは根治の可能性がない場合、リスクを取っても手術をやらなければと思ってしまいます。

 

3) 下手な外科医が手術を行うとき

 

手術の難易度はさほど高くなくても、下手な外科医が、指導的助手がいなくて手術をするとリスキーな手術となります。手術はクオリティーは、経験が大きくものを言います。子細なことでも、見逃したり怠ると、時に術後重篤化することがあります。例えば、今ではルーチンの手術となっています腹腔鏡下胆のう摘出術でも、手術中に胆管損傷を知らずに起こして、手術後に明らかな胆汁ろうが起こり、保存的治療で治癒せず、再開腹で胆道再建をベテラン外科医から行ってもらったにもかかわらず、胆汁性肝硬変に至り、肝移植しか救命のすべがなくなることさえあります。通常、オーベン(指導医のこと)の指導の下で中堅若手の外科医は手術が行われるのですが、諸般の事情によりそうならないこともあり得るので、手術を受けるときの病院選択は大事なことです。

 

 

 

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