消化器(食道・胃・大腸・肝臓・胆道・膵臓)がんの予防、早期発見、症状、診断、治療

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どこまでの患者様に手術する?(心大血管)

どこまでの患者様に手術する?(心大血管)

 

心大血管に既往、持病のある方も消化器がんに罹患します。手術が妥当な治療選択肢となるとき、迷うことがしばしばあります。これはどういうことかと言いますと、周術期(術中術後)に心大血管の合併症で命を落とす可能性が、手術侵襲と持病の心大血管の問題により、膨らむことです。

 

通常、全身麻酔下の手術を計画する場合、循環器科、麻酔科にコンサルトします。そのアドバイスなりを受けて最終判断をするのは当該診療科(消化器がんの手術であれば消化器外科)となります。よく見られる心大血管疾患は虚血性心臓病、弁膜症、心筋症、大動脈瘤などで、心駆出率、左室壁運動、弁膜症の程度、大動脈瘤経の程度などにより、周術期心イベントで亡くなる可能性も手術侵襲と相まって上昇してきます。

 

ストレス回避から見れば、外科医も避けたい所となりますが、患者さんや家族の想いを直接触れると、むげに断るわけにもいけません。時に迷います。もちろん、IC(インフォームド・コンセント)でしっかり説明はしますが、結果が悪ければ、患者さん家族はもちろんのこと、医師側、病院側も何とも言えない気持ちとなります。例えば、進行大腸がんで、大腸がんイレウス寸前の状態でもありながら、進行度からは手術により根治(5年生存率70%)が十分見込める一方で、陳旧性心筋梗塞のため心駆出率(EF)が20%で、全身麻酔と手術侵襲(開腹下右半結腸切除、手術時間1時間半)から周術期心イベントによる手術死亡率が30%程ある場合があったとしましょう。通常右半結腸切除の手術死亡率は1%以下です。こういったときは常に迷いますが、私は主観的に手術死亡率が30%までと予測されるときは手術を行うこととしています。おそらく患者さんは、数か月以内に大腸がんイレウスとなり、自覚症状がつらいものとなります。症状緩和の人工肛門造設も心機能低下のため躊躇われるものとなります。

 

もちろん、他の病院で心大血管の持病のため手術不能と言われ、私が手術をして良好な経過となるケースもあり、その場合は患者さん家族から非常に感謝され、その時は外科医冥利に尽きます。

 

弁膜症が重症ということで、麻酔科が全身麻酔を断ることもありますし、この場合は弁置換を先行もしくは同時に手術をすることもあります。

 

血液サラサラ」の薬を飲んでいる患者さんはたくさんいます。いわゆる抗血小板治療薬(バイアスピリンなど)、抗凝固療法治療薬(ワーファリンなど)です。これは、周術期マニュアルがすでに出来上がっています。外科側の問題としては、術中出血量ですが、抗血小板治療薬はあまり問題とならないように思っています。もちろん、マニュアル、ガイドラインは遵守します。抗凝固療法は、特に僧帽弁置換術(特に機械弁)、冠動脈ステント留置後の患者様には気を使います。

 

血液サラサラの薬に関しては、新薬の出現とエビデンスの蓄積により、時代の流れとともに対処法が改変されていくかもしれませんが、心大血管系の持病を有する患者さんへの消化器がん手術は、「何がfor the patient」、「何がベストともいわずマッチベター」など含め、術者の技量や想い、病院の方針などでコンセンサスが得られにくい分野だと考えています。

 


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