低位前方切除
低位前方切除(Low anterior resection)は、通常上部直腸(Ra)ー下部直腸(Rb)の口側の直腸がんに対する標準術式です。低位というのは、腹膜反転部より肛門側で吻合する(腹膜反転部より口側で吻合する手術は高位前方切除)意味合いで、名づけられています。肛門機能は温存され人工肛門はありません。
参照:医療関係資格試験マニア
低位前方切除は、現在あるいは今後も一般的に行われる中難度の消化器外科手術です。腹会陰式直腸切断術(Mile's手術、永久式人工肛門)になるか低位前方切除(人工肛門なし)になるかは、がんの局在によりほとんど紙一重です。腹腔鏡下手術もすでに保険収載されています。
手術後急性期の合併症として、重要なのは縫合不全(吻合したところから便がもれること)です。縫合不全を回避するために、吻合部に緊張(テンション)がかからないように吻合すること、断端の血流をよくすることを心がけます。病院によっては、これを回避するために、一時的(3か月ほど)に、回腸(小腸の肛門側)に双口式人工肛門を作成することもあります。もう一つは、吻合部狭窄です。DST(double stapling technique)という手法で吻合するのが一般的ですが、自動縫合器は日本人では多くの場合33mm径を使用します。
人工肛門がなく、根治性がしっかり得られれば、低位前方切除の方が100%良いと思われそうですが、この手術最大と言ってもいい問題点は、術後の頻便(排便回数が多いこと)、便失禁になります。吻合部が肛門近位になればなるほど、頻便と便失禁は大きくなり、超低位前方切除(肛門から吻合部まで2cm)になりますと、排便回数が1日20回になることすらあります。頻便、便失禁の原因は、本来備わっている直腸膨大部が手術により欠落することと、肛門括約筋の機能が、手術により破壊されることで起こります。
マイルズ手術と同様に、直腸がんが進展し、周辺の切除範囲が大きくなればなるほど、排尿障害、性機能障害も生じてきます。
近年、腹腔鏡下直腸切除の割合も増えてきました。手術の安全性(短期成績)、直腸がんの根治性(中長期成績)が、証明されていることが追い風となっています。ただし、腹腔鏡下直腸切除は、技術的にはやはり困難な部類に入るので、この手術を選ぶときには、施設、執刀医を見極めるに越したことはありません。大腸肛門病センター、あるいは大病院の大腸外科部門で手術を受けるのが妥当な選択かもしれません。
腹腔鏡下低位前方切除
大腸がんの腹腔鏡下手術は、胃がんに比べ適応拡大(進行がんに対しても行われること)が普及しています。
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