胃がんの予防、早期発見、症状、診断、治療

胃がんになった時の病院の選び方

胃がんと診断されたとき、その局在(がんの場所)、進行度により、治療方針が胃癌診療ガイドラインにより決定されます。

 

胃がんになった時の病院の選び方

 

治療法は大きく、1)内視鏡的切除(内視鏡的粘膜切除(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD))、2)外科治療、3)化学療法に大別されます。

 

内視鏡的切除は消化器内科医が一般的に行い、特にESDは、手技的に難易度が高く、リスク(出血・胃穿孔)を伴うため、情報収集の上、選ぶことが重要となります。

 

外科治療は、胃がんの局在と進展により、幽門側胃切除、胃全摘、噴門側胃切除が主なものとなります。アプローチは、腹腔鏡または開腹となります。手技的に最も容易な手術は開腹幽門側胃切除で、初心者消化器外科医(卒後3年目〜5年目)の登竜門的な手術です。

 

最も難易度の高い手術は、完全腹腔鏡下胃全摘で、これは再建も鏡視下で行うものです。この手術は、内視鏡技術認定医が行う、もしくはスーパーバイザーとして指導的助手をする必要があります。

 

外科治療が必要となった時、可能であれば、開腹手術、腹腔鏡下手術いずれも対応しており、年間手術症例が多い施設を選ぶのが妥当です。開腹手術と腹腔鏡下手術を比較した場合、早期胃がんで、幽門側胃切除であれば、腹腔鏡手術でも、安全性、根治性は保障され、整容性と低侵襲性は開腹に比べ明らかに軍配が上がりますので、信頼できる病院であれば、腹腔鏡下幽門側胃切除を選ばれていいと思います。漿膜下層以深進展の進行胃がんまたは術前にリンパ節転移複数個の指摘がある場合は、私は開腹手術が望ましいと思っています。

 

進行胃がんに対する腹腔鏡下手術、腹腔鏡下胃全摘の安全性は、まだまだコンセンサスが得られていません。この場合は、特に慎重に病院を選ぶ必要があります。学会では、いつもの先生方が、このあたりの手技をビデオで講演しています。

 

私は、進行度からは、cT2N0以下までの胃がんにしか腹腔鏡手術は適応しませんし、完全腹腔鏡下胃全摘は、膵頭十二指腸切除や肝葉切除より、難易度が高く、緊張感があると感じています。

 

化学療法は、手術後補助化学療法と切除不能胃がんまたは再発胃がんに対する推奨レジメンが決まっていますので、胃がんの化学療法担当の当該診療科がある施設では、まず心配はいりません。昨今、消化器外科医が化学療法まで行う体制から、消化器内科もしくは腫瘍内科に移行する施設が多くなってきました。これは、当然のトレンドだと私は思っています。

 

緩和ケア科もあった方が良いです。WHOは緩和ケアはがん終末期になった時に導入するものではなく、“がん”と診断されたときから導入するものと発信し、精神的・身体的サポートを淀みなく行うことを推奨しています

 

放射線治療は、胃がんに対して行われることはまずありません。

 

実際の病院の選び方としては、関東、関西、地域中核都市では、がんセンターや急性期がん拠点病院であればほぼ確実でしょう。腹腔鏡下手術は、もっぱらそればかりやっている施設、診療科もあります。

 

症例数は非常に大事な因子ですが、問題は手術までの期間ということになります。分化型の早期胃がんであれば、2か月待ちまではいいかもしれませんが、それ以上となると、2番手、3番手を考えたほうがいいかもしれません。

 

進行がんや低分化型腺がん、印環細胞がんであれば、やはり急いだほうが良いです。出来れば診断がついた時点から1か月以内の手術が望まれます。

 

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