胃がん手術
胃がんの手術は近年減ってきていることを実感します。その理由は2つあり、まず第1にヘリコバクターピロリ菌が胃がんの原因と関連のあることが明らかとなり、除菌療法の広がりによって胃がんの罹患率そのものが減ってきたこと。第2に内視鏡治療(EMR、ESD)の発達及び適応拡大により、手術に至るケースが減ってきたことです。
胃がんの手術の詳細は、日本胃癌学会編 胃癌治療ガイドライン 医師用 2014年5月改訂 【第4版】のなかの「II章治療法 B手術」に詳細は記載されています。
胃がんの手術は大きく治癒切除と非治癒切除に区分され、治癒切除は定型手術と非定型手術と区分されます。非定型手術はさらに縮小手術と拡大手術に区分されます。非治癒切除は緩和手術と減量手術に区分されます。
治癒切除は「胃がんを根治せしめる」手術であり、非治癒切除は「症状緩和もしくは延命の願い」を込める手術と言えます。
胃の切除範囲は、いくつかありますが、胃全摘か幽門側胃切除(幽門輪を含む胃の3分の2以上の切離)に大別されます。手術に際してはほぼ必ず、切除したのちに病理医に切除断端にがん組織の有無を確認してもらいます(術中迅速組織診)。
幽門側胃切除は、その後のQOL、食生活、社会生活にほぼ支障は出ません。胃全摘は、食生活に相応の支障が出ます。体重も退院時と変わらない、体重増加はあまり望めません。ただし、胃全摘をしても社会生活は充分継続全うできます。
通常、進行がんもしくは悪性度の高いがん(印環細胞がんや低分化型腺がんなど)は断端は5cm以上取るようにしていますし、早期がんや悪性度のさほど高くないがんでも、最低2pは断端を確保するようになっています。
リンパ節郭清は周辺の所属リンパ節に番号が付加されており、転移しやすい部位を含め、例えて言えば風呂敷に包むように、一括して切除します。
切除が完了したのちに消化管再建を行います。胃全摘であれば、グローバルスタンダードは現在Roux-en-Y(ルーワイ)法です。今までいろいろな再建法(空腸間置、パウチ、ダブルトラクトなど)が行われてきましたが、シンプル、簡便、安全性(食道空腸縫合不全などの合併症率の低下など)より、世界でルーワイ法が一般的に行われています。
参照:東京医科大学病院
幽門側胃切除の後は、ビルロートI法かルーワイ法で行われます。術者の好みによりますが、私はルーワイ法で行っています。ビルロートI法は、残胃がんの発生、逆流性食道炎、縫合不全の発生率などで、ルーワイ法に劣ると考えています。ただしルーワイ法は、吻合箇所が一つ増える、胃内容排出遅延(食後のもたれ感)が起こりやすいという欠点もあります。ビルロートII法は現在あまり行われなくなってきたように思います。
参照:日本消化器外科学会
腹腔鏡下胃がん手術は腹腔鏡下大腸がん手術に比べると、難易度も高く、進行がんに対する安全性、根治性はまだ担保されていません。cStage II以上の胃がんに対しては、いまだ慎重姿勢を取っています。胃は解剖学的に周辺臓器と密着しており、リンパ節郭清をしっかりと行い、消化管再建も安全性を担保すると意味合いからも、大腸がんの腹腔鏡下手術を比べて難易度も高く、ステージIIAくらいまでに限定するのが無難と思います。
胃がんの手術は、日本が世界を牽引しています。
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