お酒はほどほどに
Br J Cancer. 2005 Jan 17;92(1):182-7.
Impact of alcohol drinking on total cancer risk: data from a large-scale population-based cohort study in Japan.
Inoue M1, Tsugane S; JPHC Study Group.
Author information
1Epidemiology and Prevention Division, Research Center for Cancer Prevention and Screening, National Cancer Center, 5-1-1 Tsukiji, Chuo-ku, Tokyo 104-0045, Japan.
Abstract(抄録、論文のまとめのこと)
We conducted a cohort study of alcohol consumption and total cancer incidence and mortality in 73,281 subjects (35,007 men and 38,274 women) aged 40-59 years old at baseline over a 10-year follow-up period. During 1990-2001, a total of 3403 cases of newly diagnosed cancer and 1208 cancer deaths were identified. In men, the lowest risk of developing cancer was observed among occasional drinkers, and a linear positive association with increased ethanol intake was noted (hazard ratio 1.18 for 1-149 g per week, 1.17 for 150-299 g per week, 1.43 for 300-449 g per week, 1.61 for > or = 450 g per week, P for trend < 0.001). The positive relation was similar for cancer incidence and mortality, but was more striking among current smokers and alcohol-related cancers. Relatively few women were regular drinkers. Our results suggest that increased ethanol intake linearly elevates the risk of cancer, and that nearly 13% of cancers among males in this study were due to heavy drinking (> or = 300 g per week of ethanol), to which smoking substantially contributed. The simultaneous reduction of smoking is therefore important for reducing the effect of alcohol on cancer risk.
お酒も量が過ぎれば将来がんになりやすい
調査開始時には、男性の70%はほぼ毎日飲酒していると回答していましたが、女性ではほぼ毎日飲酒しているのは12%でした。調査開始時の飲酒の程度により6つのグループに分けて、その後のがん全体の発生率を比較してみました。調査開始から約10年間の追跡期間中に、調査対象者約73,000人のうち約3,500人が何らかのがんにかかりました。
時々飲酒しているグループと比べると、男性では、アルコール摂取量が日本酒にして1日平均2合未満のグループでは、がん全体の発生率は高くなりませんでした。一方、飲酒の量が1日平均2合以上3合未満のグループでは、がん全体の発生率が1.4倍、1日平均3合以上のグループでは、1.6倍でした。(なお、日本酒1合と同じアルコール量は、焼酎で0.6合、泡盛で0.5合、ビールで大ビン1本、ワインでグラス2杯(200ml)、ウイスキーダブルで1杯です。)
飲酒と喫煙が重なるとがんの発生率が高くなる
この結果を、たばこを吸う人と吸わない人とに分けてみてみたところ、たばこを吸わない人では、飲酒量が増えても、がんの発生率は高くなりませんでした。ところが、たばこを吸う人では、飲酒量が増えれば増えるほど、がんの発生率が高くなり、ときどき飲むグループと比べて、1日平均2−3合以上のグループでは1.9倍、1日平均3合以上のグループでは2.3倍がん全体の発生率が高くなりました。このことから、飲酒によるがん全体の発生率への影響は、喫煙によって助長されることがわかります。
もちろん、口唇・口腔・咽頭・食道・肝・喉頭など、飲酒と特によく関連していると考えられているがんだけでみてみると、喫煙していなくても飲酒量が増えればがんの発生率が高くなりますが、喫煙が重なることにより、さらに発生率が高くなるという結果になりました。
飲酒と喫煙が重なるとなぜいけないのか
お酒に含まれているエタノールは分解されてアセトアルデヒドになりますが、これががんの発生にかかわると考えられています。そして、喫煙者では、エタノールをアセトアルデヒドに分解する酵素が、たばこの煙の中に含まれる発がん物質を同時に活性化してしまっているとも考えられています。
やはり多量飲酒はよくない
この研究からは、何らかのがんになりにくくするには、日本酒換算で一日平均2合以上の多量飲酒は慎んだ方がいいといえます。しかし、同じ多目的コホート研究からの結果では、最近増加している糖尿病や大腸がんなら、一日平均1合を超えると危険性が高くなるという結果となっています。いろいろな生活習慣病をまとめて予防しようと考えると、お酒は日本酒換算で一日1合(ビールなら大びん1本、ワインならグラス2杯)程度までに控えておいた方がよいといえるでしょう。
まとめ
お酒は適量が望ましい、飲みすぎると発がんのリスクが高まるし、喫煙が加わるとがんになるリスクが急速に高まる。
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