消化器がんの手術

消化器がん手術

消化器がん手術は、あくまでも局所制御の手術です。遠隔転移がある時や局所のみにがんが留まっていても、手術ができないこともあります。

 

私は、いつでも使用する慣用句として、「風呂敷に包むように」という例えを使います。風呂敷に包むようにというのは、所属リンパ節を含め、少なくとも肉眼的、理想的には病理学的にがんを取りこぼしの無い様に切除することを意味しています。

 

患者さんや家族にとりまして、手術の詳細な内容はわかりません。消化器がんの手術が理想的に、風呂敷に包むようにできたか否かは、最終的な病理診断により評価されます。

 

完全に切除できた手術をR0手術と言います。R0とは病理学的にがんの遺残がないことです。一方R2手術とは肉眼的に明らかにがんが残った手術です。R1手術とは、病理学的にがん細胞あるいはがん組織が遺残したと思われる手術です。

 

消化器がん手術の重要度は、1に安全、2に根治、3が機能温存(切除する臓器や器官が少ないこと)、4が審美性(傷跡が小さいこと)と考えています。

 

安全性は、患者さんの状態、消化器がんの進行度と術式、術者の技量と周術期管理により規定されます。根治性は消化器がんの進行度に規定されます。機能温存は消化器がんの進行度と悪性度(がんとまではいかなくても低悪性度腫瘍というカテゴリーの腫瘍があります)により規定されます。審美性は消化器がんの進行度、内視鏡手術の技術(例えば内視鏡技術認定医の証明書の有無)などにより規定されます。

 

消化器がん手術の優先順位は間違いなく、1−2−3−4の順になると考えています。

 

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がんは早期発見であれば治癒率も高く、見過ごして進行がんとなれば、治療費、生活費もかなりかかります。がん保険含め医療保険は、がん治療においての投資です。がん早期発見の投資は、いまだ脚光を浴びてはいませんが、今後ますます、普及していくと思います。

消化器がん手術記事一覧

創傷治癒(キズの治り)

創傷(キズ)は、次の3つの過程で治癒します。第一期:炎症反応期まず血小板(けっしょうばん)の凝集と血管収縮で血が止まります。皮膚や臓器が損傷を受けると、組織の破壊が起こり、血管も断裂して局所に出血します。 血液に含まれている血小板は、断裂した膠原繊維に付着すると活性化し、活性化した血小板から放出され...

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栄養管理の重要性

手術成績の鍵を握るのは、周術期(術前・術後)の栄養管理だと私は思っています。栄養管理が上手くいくと、大きな手術侵襲にも耐術し、回復には、時間と体力がかかる重篤な合併症も、乗り越える抵抗力が備わってきます。栄養の評価は、通常、1)身体測定、2)血液検査、3)免疫学的指標の3つの視点から行われます。身体...

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手術の基本

手術の基本操作は、切る(切離)、剥がす(剥離)、焼く(凝固、焼灼)、結ぶ(結紮)、縫う(縫合)の五つで、これらの繰り返しで、ほぼすべての手術が成り立ちます。切離の器具としては、メス、鋏(はさみ)、電気メス、超音波凝固切開装置などがあります。皮膚や血管を切るときは、メスや鋏を使い、組織を切るときは、出...

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手術ミスと合併症の違い

手術に際してミスがあったかどうかは、経験ある外科医であれば、内心わかっています。100%完璧な手術は、ほぼ無理です。多少のミスは、しばしば、あります。私は、終わった時に、理想的には90点以上、最低でも60点で、「よし」としています。「あの時こうすればよかった」、「あの操作で無駄な出血を招いた」、「止...

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「手術は成功しました」は概して誤り

よくテレビドラマを見ていると、外科医が手術後家族に対して、「手術は成功しました。ご安心下さい。」というフレーズがあります。実際のシチュエーションからは、99%誤った表現となります。「手術は予定通り終わりました。これから、○○、△△といった合併症があり得ますので、引き続き注意して観察していきます。」が...

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神の手、ブラックジャックはいるか?

結論から言いますと、神の手を持つ外科医、ブラックジャックはこの世にいません。神業(かみわざ)と称される外科医、ブラックジャックのようにチャレンジする外科医、鬼手仏心(きしゅぶっしん:外科医は手術の時、残酷なほど大胆にメスを入れるが、それは何としても患者を救いたいという温かい純粋な心からである。)を理...

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外科治療戦略の構築と実施

患者さんが、手術が必要とされる病気になったと仮定しましょう。その時、外科医はどういうふうに治療戦略を構築し、実施していくかを概説してみます。60歳、男性。次第にひどくなる心窩部痛(みぞおちあたりの痛み)を主訴として、A消化器内科クリニックを受診しました。クリニックの医師は、診察した後、腹部超音波検査...

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どこまでの患者様に手術する?(心大血管)

心大血管に既往、持病のある方も消化器がんに罹患します。手術が妥当な治療選択肢となるとき、迷うことがしばしばあります。これはどういうことかと言いますと、周術期(術中術後)に心大血管の合併症で命を落とす可能性が、手術侵襲と持病の心大血管の問題により、膨らむことです。通常、全身麻酔下の手術を計画する場合、...

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手術は体操競技のようなもの

手術は始めたら必ず終わらなければなりません。スタート(搬入)と着地(帰室)があります。演技(手術)中、どういう技(手技)を織り交ぜながら、完成度がどれだけ高まるか。外科医は、いつもそう思っています。採点が成されます。採点者は先輩、同僚、後輩の外科医であり、麻酔科医であり、手術場のスタッフであり、患者...

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腹腔鏡手術の功罪

内視鏡外科手術は、整容性(傷が小さい)と低侵襲性(患者さんの身体的負担が少なく回復が早い)が最大のメリットです。外科領域では、1987年フランスのMouretが世界で初めて腹腔鏡下胆のう摘出術(Laparoscopic cholecystectomy、ラパコレ) を行い、日本では1990年に同手術が...

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上手な外科医と下手な外科医の見分け方!5つのチェックポイント

よく「外科医は器用でないとダメ?」という質問をされますが、これは間違いです。手先の器用さ=上手な外科医ではありません。では上手な外科医はという切り口から考えてみました。資格まず第1に各種資格の取得です。消化器外科医を例にとるならば、外科専門医は当然として、消化器外科学会専門医は必要最低条件でしょう。...

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腹腔鏡下胆嚢摘出術

腹腔鏡下胆嚢摘出術(Laparoscopic cholecystectomy、通称ラパコレ、ラパ胆)は、原則、有症状胆嚢結石症に対して行われます。消化器がん外科治療ではありませんが、消化器外科医が携わるルーチン手術なので紹介します。安全性(手術死亡率0.01%以下)、整容性、低侵襲性が担保されること...

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縫合不全 -消化液・胆汁・膵液の漏れ-

消化器がんの外科手術は、再建(さいけん)を伴う手術が多いです。食道、胃、大腸、肝臓(胆管合併切除を伴うもの)、胆道、膵手術のいずれにも再建が伴います。再建には、食べ物の通り道の消化管再建、胆汁の流れ道の胆道再建、膵液の流れ道の膵再建とざっくり、3種類あります。消化管の再建は、食道がんに対する食道切除...

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消化器外科手術後合併症(消化器以外)

消化器手術の急性期合併症として、むしろ怖い(避けたい)ものの多くは、消化器以外の合併症です。これらの中には、しばしば致死的となるものがあります。急激に発症し、死に至る可能性のある合併症の中には、周術期心筋梗塞、急性心不全、心室性不整脈といった循環器系、肺血栓塞栓症、緊張性気胸、急性肺障害といった呼吸...

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リスキーな手術

いわゆる危険な手術のことですが、これには総じて3種類あると思っています。1) 外科治療対象となる疾患が重篤なもの例えば、下部消化管穿孔、肝がん破裂、内臓動脈瘤破裂などです。下部消化管破裂を例にとってみますと、通常急性腹症で発症し、重篤になればショックバイタル(血圧低下、意識混濁など)となり、手術まで...

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困難な手術

技術的に難易度の高い手術です。この場合相対的困難な手術と絶対的困難な手術と二通りあると思っています。相対的難易度の高い手術とは、外科医Aにとってはさほどでもない手術が、外科医Bにとっては難易度が高い手術となります。絶対的に難易度が高い手術は、ある専門集団(例えば消化器外科医として)の中で、難易度が高...

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外科医のことはじめーアッペ、ヘモ、ヘルニア、バリックス

押しも押されぬ大外科医でも、初心者マークの頃は誰でもある。外科医の仲間内で、よくアッペ、ヘモ、ヘルニア、バリックスということが言われるが、これらは外科医になって、一般的に最初に習得する手術のこと。いきなり、胃を切ったり、大腸を切ったり、いわんや肝臓を切ったりすることはありません。オーベンと言われる、...

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アッペ、ヘルニアのスタンダード手術

アッペとはappendectomy(虫垂切除)の略です。ちなみに、-ectomyは切除を意味する医学用語の接尾語で、虫垂(appendix)を切除(-ectomy)する=appenndctomyとなります。胃切除はgastrectomy、食道切除はesophagectomyなどとなります。アッペは、...

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